ニューヨーク証券取引所買収、その背景と影響は?
20日、エネルギーおよび産品の証券取引所であるインターコンチネンタル取引所(ICE)は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)ユーロネクストを、82億ドルで買収する契約に合意した。ICEは世界最大級のデリバティブ市場オペレーターに仲間入りする。ICEのシュプレッヒャーCEOは代表取締役に留任し、NYSEのニーデラウアーCEOが社長、およびNYSEグループの代表取締役となる。現状、合併後の株式の36%相当を保有することになるNYSEの株主は、これを現金または合併会社の株式と交換する。本社は、両社の現拠点であるアトランタとニューヨークに置かれる予定だ。また、NYSEのヨーロッパ株式市場オペレーション事業は分離されると予想されている。
発表は株式市場に歓迎され、ICE株は1.4%上昇、今年8%減少していたNYSE株は34%急騰した。
創立12年のICEが、創立220年を誇る「ウォール街のシンボル」、NYSEを買収したことには、両社の思惑の一致がある。ICEは参入障壁の高いデリバティブ取引界への足がかりを求めており、とりわけNYSE傘下のヨーロッパデリバティブ取引所、NYSEリッフェを欲しがっていた。NYSEは、電子的な取引形態など時流への対応に乗り遅れて取引離れを招いており、収益の主力を株取引などの本業ではなく、デリバティブ取引に依存する状態だった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「開始ベルとフロアトレーダーたち」による、いかにも伝統的なNYSEの取引風景について、「ローマの遺跡」「床の上の儀式」などとの表現を紹介している。
両社CEOを交えて内部的経緯を詳しく報じた同紙によると、この日に買収発表が行われたことは、デリバティブ取引に関する規制強化が迫っていることを見越したため、およびヨーロッパ等での規制当局との会合の兼ね合いだったという。また関係者によれば両社は、他のあらゆる合併の可能性と比較しても、この組み合わせこそがベストカップルと考えているという。以前に両社それぞれ計画した買収あるいは合併は、反トラスト(独占禁止)法などの問題で規制当局に阻止されているが、今回の場合ICEとNYSEは事業の重複が少なく、従って規制に抵触するリスクも少ないとのことだ。