アサド政権が追い詰められた理由とは
13日、ロシアのボグダノフ外務次官は、アサド大統領側の敗北が近いという見解を明らかにした。ソ連時代から先代の故アサド大統領のシリアを支持してきたロシアが、ここに来て初めて、政権崩壊が間近であるという認識を発表した。ただし、クレムリンの大統領スポークスマンは、それによってシリアとの関係に変化が生じることはないとしている。同日、NATOのラスムセン事務総長も、体制が転覆するのは時間の問題であるとコメントしている。米国は、ロシアのこの見解を歓迎している。
ニューヨーク・タイムズ紙は、ボグダノフ外務次官がシリアの将来について述べた悲観的な見通しを紹介。すなわち、反体制派がシリアの60%を支配するために、2年間で4万人が犠牲になったという事実を基にすると、今後も新たな犠牲者が数万単位で予測されるというのだ。
一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ロシアがアサド政権を見捨てたくないのは、アサド政権終焉が過激なイスラム主義の幕開けとなるからだという元ホワイトハウスのアドバイザーの見解を紹介している。
同紙は、最近ロシア高官と接触した米欧高官の談話を紹介する形で、モスクワでもアサド政権を救うことはできないという認識が高まっているとした。実際、現アサド大統領との関係は、先代のアサド大統領との関係とは異なり希薄であるとも指摘している。米国務省のスポークスマンによると、問題の焦点は、現在国際社会で進行中である内戦後の枠組み作りの協議にロシアが参加するか否かであるという。同紙によると、ロシアは、反体制側とアサド政権の対話を支持しているが、西側の武器と資金供与がこれを阻害してきたと考えている。
なお反体制派は、シリア全土の60%を支配し、首都ダマスカスを陥落させる勢いにあるという。こうした状況下、米国高官によると、シリア政府が初めて自国内(の反体制派)に向けてスカッドミサイルを発射したという情報もあるが、シリアはこの観測を否定している。フィナンシャル・タイムズ紙は、自国内へのスカッドミサイルの発射が疑われていることを取り上げ、シリア空軍の弱体化を推測。地対空ミサイルによる反体制側の攻撃と補給物資の不足によって、それまで反体制側を駆逐してきた空軍が機能しなくなり、スカッドミサイルを打ち込むしか選択肢がなかったのではないかというのだ。