EU財務相会談、「珍しく」まとまった理由
12日、EUサミットに先立っての財務相会談は、銀行連合案に向けての第一歩である欧州中央銀行(ECB)による独占的銀行監督体制について、妥結に漕ぎつけた。ニューヨーク・タイムズ紙は、日付をまたいでの会議紛糾が日常茶飯事となっている昨今、財務相たちが今度こそ合意に漕ぎつけて1年を締めくくるとの意気込みのもと、「珍しく」それに成功したと報じている。
この枠組みに関しては、大銀行が多いフランスなど、欧州の全銀行を例外なく監督させるべしとの意見と、小銀行が多いドイツなど、小銀行は各国政府の管理下に残した方が良いとの意見とが永らく対立していた。しかし結果的には、所属国GDPの20%以上または300億ユーロ以上の資産を持つか、少なくとも3 EU加盟国に子会社がある銀行はECB監督下に入るとの線で合意がなされた。ただしフィナンシャル・タイムズ紙は、ベルリンが他国の全銀行の救済を請け合ってくれると期待するのは危険だ、というショイブレ独財務相の警告を伝えた。同紙は、ドイツの柔軟な姿勢は交渉の行き詰まりを打破するものであるが、スピード感に欠け、現在危険な状態の銀行救済に間合わなくなる、との懸念も伝えている。
また、ユーロを採用していないイギリスやスウェーデンは、ECBが自国の銀行に介入することに難色を示していた。オズボーン英財務相は「イングランド銀行がHSBC(英銀行)パリ支店に行使できなかった権限を、ECBはロンドンのドイツ銀行に行使できるというのは、明らかに我々にとって受け入れがたい。どうみても不公平な取り決めでしょう」と発言している。これについては、当事国に拒否権が与えられる方針とのことである。さらに、ユーロ圏諸国にしか投票権のないECB政策理事会が全EU諸国に口出しできるという問題について、ショイブレ独財務相はECBの金融政策と銀行•監督政策の分離を繰返し主張していた。これについては意見の相違が発生した場合は非ユーロ国でも政策理事会に招待されるというが、具体的結論にはまだ至っていないようだ。
銀行連合案は、破綻した銀行が所属国の財政に悪影響を与えない形で、直接救済を申請できる枠組みとして期待されている。EU首脳は今年中に銀行監督についての合意を締結し、2014年元日(ECBの準備状況によっては数ヶ月延期)から監督業務を実施に移したい考えである。