米「財政の崖」回避を阻む人々の主張とは?
年明けに米国を景気後退に陥れるおそれのある「財政の崖」回避に向けた、民主・共和両党の交渉が足踏み状態のままだ。オバマ大統領はクリスマス休暇前の合意を目指すが、両党の財政赤字削減案には依然大きな隔たりがある。
オバマ大統領は10日、今後10年の税収増を1兆4000億ドルに引き下げる新提案を行った。しかしベイナー下院議員は税収増を8000億ドルとする方針を崩さず、オバマ大統領の新提案については「下院も上院も通過できない」と述べた。
オバマ大統領はまた、妥協案として来年の法人税制の見直しを提案したが、共和党側はそれも拒否した。民主党上院議会リーダーのハリー・リード氏は、クリスマス前に決議するのは「非常に困難」という見解を示した。
両党の合意を阻む一因として、フィナンシャル・タイムズ紙は共和党内部の強硬派の存在に注目している。そして「党の保守的な原則を損なう取引に合意するより、財政の崖から飛び降りるほうがよい」というスティーブ・スカリス下院議員のコメントを掲載した。同紙は、強硬派はスカリス氏だけではないとし、ベイナー下院議長が下院で妥協案を通すためには、共和党の過半数を味方にする必要があるとの見方を示した。
ニューヨーク・タイムズ紙も同様に、ベイナー下院議長が共和党内で充分な票を得られるかどうかに着目した。そして、オバマ大統領はこの件について運命をベイナー下院議長に預けるしかないと報じた。また今週、オバマ大統領が共和党側の要求(メディケア支給資格を65歳から67歳にすること、社会保障制度の費用抑制)に反対し、労組などから圧力を受けているとし、オバマ大統領の立場の弱さも指摘した。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、財政の崖に関するWSJ/NBCニュース世論調査(12日発表)の興味深いデータを掲載した。その中で、国民の約3分の2は、たとえ社会保障・メディケアが減り、一部の税率が上がっても、議会に連邦予算赤字を削減する取り決めをしてほしいと答えている。また、国民の4分の3以上、共和党の61%が、財政の崖を避けるため富裕層増税を受け入れると答えた。これは、民主党との妥協を望む共和党員が4月時点で38%だったことと比べると、注目すべき変化だと報じられている。
概して、アメリカ国民の大半が再選後のオバマ大統領を認め、共和党を否定的にとらえていると同紙は分析している。共和党に対する国民の否定的な見方は6年以上の世論調査でも見られ、共和党は厳しい現状に直面していると締めくくった。