欧州経済は底打ちしたのか?
4日、欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタットが発表したデータによると、ユーロ圏17カ国の小売売上高は9月から10月にかけて1.2%下落した。前年は3.6%下落だった。EU全27カ国では1.1%減で、財政危機に直面する南欧諸国だけでなく、ユーロ圏北部の中核国でも同様の傾向がみられる。フランスでは0.4%増となったものの、ドイツは2.8%減であり、スペインで1.2%、ポルトガルで4.5%となった。
また金融情報会社マークイットによる11月の購買担当者総合指数は46.5で、10月の45.7より上昇しているが、成長と収縮の境目である50を10ヶ月連続で割り込んでいる。ドイツでも49.2だ(10月は47.7)。ただ、新規受注が伸びたアイルランドだけは56.1と健闘した。
景気悪化の速度が下がったことで「不況が底を打った」「来年から上向く」とみる楽観的な意見も多い一方、景気後退には変わりがなく、それどころか金融・貿易のつながりを通じて不況が波及し続けているとの懸念も根強い。例えば、フィンランドの第3四半期GDPは2四半期連続での縮小を示しており、ユーロ圏で9ヶ国目となる「経済縮小国」への仲間入りとなった。スウェーデンのサービス業購買担当者指数も、10月には50.2と辛うじて成長側に浮いていたものが、11月は46.4に急落していた。フィナンシャル・タイムズ紙は、ユーロ圏が「日本が過去20年間経験してきたような無期限の無成長フェーズ」に入る、との予測もあると伝えている。
各紙は、各国の財政緊縮政策が、雇用や企業・個人の消費にブレーキをかけていると断定している。先月30日のユーロスタットの発表では、ユーロ圏の10月の失業率は前月の11.6%から上昇し、10月の最高記録である11.7%となっていた。特に25歳未満の失業率は23.9%で、ニューヨーク・タイムズ紙は、そのためにEUのGDPの1.2%が失われているとして欧州委員会が深刻な懸念を表明したことを伝えた。委員会は問題に対処するため、若者のための就業保証、欧州内での越境雇用への障害を減らす労働市場の改革、高品質な研修・実習プログラムの提供などといった新しい施策を勧告しているが、中央銀行も含め具体的な行動はまだ見えていないようである。