メルケル首相、「圧勝」の理由とは?
4日、ドイツの与党キリスト教民主同盟(CDU)は、ハノーヴァーで開かれた党大会にてアンゲラ・メルケル首相の党首続投を決定した。
メルケル首相は58歳。旧東ドイツで育ち、かつてヘルムート・コール元首相の薫陶を受けた。党首としては7選目であり、今回の得票率は97.9%と、自己最高記録になった(ただ、コール元首相やアデナウアー元西ドイツ首相の記録はこれを凌ぐ)。
メルケル首相は来年9月のドイツ総選挙で首相3選を狙うとされている。世論調査によると、首相に相応しい人物として現在最有力であり、ライバル社会民主党(SPD)のペール・シュタインブリュック氏よりも優勢と報じられている。各紙は、伝統主義路線から中道路線への移行が成功したことや、欧州危機に際して存在感を保った舵取り(ショイブレ財務相も含めて)が評価されていると分析している。ただしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ドイツの権益保護第一な姿勢のため、海外では批判も多いと指摘した。
しかしCDU党の支持は40%弱であり、第1党候補ではあるものの、政権安定のためには他党連立が必要になる状況だ。現在の連立パートナーは、もともと姉妹党であるキリスト教社会同盟(CSU)のほか、献金スキャンダルなどで退潮著しい自由民主党である。左派である緑の党やSPDとの大連立も噂されているが、メルケル首相はこの日の演説でさっそく両党の公約を罵倒したことが報じられた。
各紙はこの党大会を、総選挙に向けメルケル首相の人気に乗じた党勢付けだと解説した。またハノーヴァーで開催したことは、1月のニーダーザクセン州知事選挙をも睨んでいるという。ただしフィナンシャル・タイムズ紙は、メルケル首相は「尊敬されてはいても愛されてはいない」との党内の声を伝えたほか、自己最高記録で選出されることやスタンディングオベーションの長さを党幹部が前もって予言していることなど、「彼女を称賛するほか選択の余地がない」という党の内情をほのめかしてもいる。