ニューズ・コーポレーションの新体制は、株主や投資家を納得させられるのか?
アメリカのメディア大手ニューズ・コーポレーションは3日、同社を娯楽部門と出版部門の2つに分割する計画と、それぞれの経営体制について発表した。昨年イギリスで発覚した盗聴事件をきっかけに高まった、ルパート・マードック会長の拡大路線への批判と、経営体制を見直すべきという株主の不満の声に応えたものとされる。
海外各紙は新体制とその人事を詳細に報じた。
発表によれば、ニューズ・コーポレーションの名前は出版部門新会社の名称として継承され、娯楽部門新会社はフォックス・グループを名乗るという。分割は来年夏ごろの完了を見込んでいるが、人事新体制は新年からスタートするという。ルパート・マードック氏は、フォックス・グループのCEO兼新ニューズ・コーポレーションの会長を兼任。息子のジェイムズ・マードック氏は副最高執行責任者の地位にとどまる。
一方、出版部門新会社のCEOには、マードック氏の腹心だという、同社傘下のウォール・ストリート・ジャーナル紙編集局長、ロバート・トムソン氏が任命された。かねてより、トムソン氏と並んで、同社の英出版グループ、ニューズ・インターナショナルのトム・モックリッジCEOの名前が取りざたされていたが、同氏は、年末で辞任の見通し。辞任の理由として、同氏は「新体制に、満足できる役割のオファーを受けなかったこと」と「22年間、5ヵ国で同社に勤めてきて、十分、やりつくした感がある」ことを挙げたという。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じたところによれば、この分割決定により、投資家は低成長の出版部門の資産と、より健全で成長著しい娯楽部門ビジネスとを天秤にかけることが可能になるという。米資産運用大手のサンフォード・C・バーンスタインの関係者は、同出版部門が成長志向か、資産保有志向かの見極めが必須と指摘し、十分な資産を保有する見通しの新生ニューズ・コーポレーションが、それをどのように使うのか-買収による業務の拡大か、配当の支払いか—などが焦点となるとした。この方向性については、今のところ、ニューズ・コーポレーションは沈黙を守っているという。
さらに注目されるのは、同社の今後のコスト削減と、赤字タイトルの削減見込みだが、これについても同社はコメントを控えている。ただし、iPad向けの電子新聞「ザ・デイリー」については、コストに見合わないとして12月中旬の廃刊が発表された。約2年前、デジタル時代の新媒体として鳴り物入りで登場した同紙の廃刊は、ある種の驚きをもって迎えられたが、同時に、この思い切りの良さに市場は好感触を得ているとも伝えられた。
いずれにしても、フィナンシャル・タイムズが指摘したように、「分割」が名目上に過ぎないのか、真の独立体制が敷かれるのかに、株主や世間の注視が注がれているといえるだろう。