パレスチナ「国家」格上げ、今後の中東情勢をどう読む?
29 日の国連総会において、パレスチナが「オブザーバー国家(投票権がない)」として承認されることになる。すでに、フランスおよびスペイン、ノルウェー、デンマーク、スイス、中国、ロシアがこの要請への支持を明らかにしている。一方、ドイツ、チェコは反対を表明している。ガザ地区とヨルダン川西地区を、パレスチナ国家と承認している国は、すでに世界で 132 ヶ国に上るため、現段階で国連総会の過半数を満たすことは確実だ。パレスチナが国家としての承認が得られることで、国連においてはバチカン市国と同じ地位を得ることとなる。なお、採決が行われる日は、パレスチナ分割が決議された 1947年11月29日からちょうど 65 周年となる。
海外紙は一様に、国家化後のパレスチナに関して悲観的な見通しを報道している。
EU 圏においてパレスチナの国家化が支持されていることについて、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、外交を重視する穏健派のファタハを政治的窮地から救う意図があったとの見解を紹介している。最近、ハマスによるイスラエル攻撃がエジプトなどに支持されたため、ファタハの地位が低下していたと同紙は指摘している。フィナンシャル・タイムズ紙も、国家化の支持は、ファタハを率いるアッバス議長とその穏健なパレスチナ・ナショナリズムの将来を西側が危惧した結果だと報じている。
一方ニューヨーク・タイムズ紙は、イスラエルがパレスチナの国家化について懸念していると報じている。具体的には、人道に対する犯罪を裁く場である国際刑事裁判所(ICC)にパレスチナが国家として参加できるようになり、イスラエルの戦争犯罪を同機関に提訴することになるのを恐れているという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、国家化が同国とパレスチナ間の同意事項に反するとのイスラエル高官の見解を紹介している。フィナンシャル・タイムズ紙は、イスラエルと米国が国家化に対して依然として反対しながらも、アッバス議長の窮地を察知し、イスラエルがパレスチナに対して懲罰的な手段を取ることはないであろうと見ている。
国家化による影響についてニューヨーク・タイムズ紙は、あくまでも象徴的なものであり、現実的な有効性はほとんどないとしている。さらに同紙は、国家化によってイスラエルとの緊張が高まり、イスラエルの同意なしにパレスチナに変化は訪れないとする米国シンクタンクの上席研究員の意見を紹介している。またフィナンシャル・タイムズ紙も、占領状態も財政危機も何も変わることがないであろうというパレスチナの政治アナリストの観測を紹介している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も同アナリストの見解を引用し、アッバス議長に対する大衆の支持は一時的に上昇するにすぎないとしている。