中国、初めて空母に艦載機着艦成功—-アメリカの軍事力への挑戦、周辺海域に伸ばす触手

 25日、中国国営の新華社通信と中国中央テレビは、同国初の空母「遼寧」で艦載機「殲15」が離着艦訓練に成功したと伝えた。遼寧は、開発途中の旧ソ連製の船体を中国がウクライナから購入し、国内で完成させたもの。一方、殲15は、ロシアの「スホイ33」、米国の「F18」に匹敵する能力を持ち、対艦、空対空、空対地ミサイルや精密誘導爆弾が搭載できるとされる。遼寧が9月に就役して以来、離着陸訓練が重ねられ、このたびの成功となったという。
 海外各紙は、中国の軍事力、思惑、今後の行方に着目した。

 遼寧と殲15の実戦能力について、新華社通信は「空母と艦載機の性能は良好で、設計上の要求を全て満たした」と報じ、技術に自信をのぞかせた。しかしフィナンシャル・タイムズ紙は、中国の技術が今なおロシアの模倣段階にあることを示唆したほか、ニューヨーク・タイムズ紙も、空母に、陸から遠く離れた洋上で実力を発揮させるためには最低3台が必要であるという専門家の談を引用。未だ実践的な軍事力では同国が目標とするアメリカに水をあけられているとした。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も同様に、同国の課題として、なお数年の訓練と、支援船の用意、関連技術の開発が必要だという専門家の指摘を紹介した。ただし同紙は、専門家が「中国による空母の離着陸ができるパイロットの養成を数年先」と見積もっていたことを指摘し、先の予想が裏切られる可能性も示唆した。

 次に、今回の成功を顕示した中国の意図について、ニューヨーク・タイムズ紙は、従来、台湾とその背後のアメリカ軍との戦闘を警戒して軍事力に磨きをかけてきた中国が最近、豊富な天然資源を秘める周辺海域に焦点を据え、ベトナム、フィリピン、日本との領土問題が浮上していると報道。フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の発表数日前に、南シナ海のほぼ全域とインドとの係争地を中国領とする地図を載せたパスポートが発行され、各国が抗議していることも紹介した。現在中国側は、空母の用途を訓練のみとしているが、専門家は、空母が周辺海域に配備される高い可能性を見越しているという。

 そもそも、中国は空母や戦闘機の開発目的を「国家の主権を守り、領土を保全するため」と明言している。ペンタゴンでも、中国がすでに開発に着手した、独自の部品を用いた空母が、15年には実用段階に達すると分析しているという。そんななか、ニューヨーク・タイムズ紙は、今後10年間、中国のトップの座に就くであろう習近平氏が、すでに軍内の人事に着手し、支持基盤を築こうとしている気配を報じた。

 いずれの記事も、世界を視野に、強大な軍事力を掌中に収め、強気の姿勢を顕示する中国への各国の注目度と警戒心を浮き彫りにするものとなった。

Text by NewSphere 編集部