ムーディーズ仏国債格下げ、トリプルAから陥落―改革の遅れに危惧―
19日、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、フランス国債の格付けを最上級AaaからAa1へと格下げした。
同じく格付け大手であるスタンダード・アンド・プアーズは1月、すでに同様の格下げを行っており、一方フィッチ・レーティングスはトリプルAを保っている。
20日の国債市場はこの格下げに反応せず、フランスの資金調達コストは記録的に低いままで、2年物国債の利回りは0.03%ポイントだけ上昇して0.139%、10年債は同じく0.08%ポイント上がって2.145%となっている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ドイツ債より高利回りでイタリア債やスペイン債よりは安全である点が買われている、と解説している(ドイツ10年債は1.146%、スペインは5.785%)。
ムーディーズはフランスの「労働・財・サービス市場の長年の硬直性」を問題とし、政府が前例のないものと自賛する改革案を「それほど壮大なものとは思われない」と一蹴している。モスコビシ財務相はただちに抗議したが、各紙によれば「言い過ぎ」「タイミングが悪い」「前政権のせい」といった内容であり、ムーディーズの言い分そのものを否定できているわけではないようだ。フィナンシャル・タイムズ紙は実際、オランド大統領が与党内左派から不十分な改革であると突き上げられている様子や、それでも労働組合への説得が難航している様子を伝えている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、「経済を観察してみればドイツよりも南欧諸国に近い」「フランスの危機感の無さはヨーロッパ随一」と、アナリストらが改革の動きの遅さを指摘していることを伝えている。
またニューヨーク・タイムズ紙は、ドイツの非営利格付け機関INCRAの格付け界への参入を報じている。INCRAはドイツのメディアコングロマリットが出資するベルテルスマン財団のプロジェクトで、サブプライムローン事件や金融危機で面目を失った大手格付け会社と異なり、商業的・政治的な葛藤と無関係に、経済データだけではなく裁判制度の効率化や汚職のレベルを含めた社会機能の指標をも見て、判断するという。INCRAは10点満点でドイツ8.1(AAA-)、フランス7.9(AA+)、イタリア7.2(AA-)、ブラジル6.8(A+)、日本6.0(A-)、などとする格付けを発表している。