全会一致は諦めムードのEU予算案―渋るイギリス―

 22日から始まる欧州連合(EU)の次期7ヶ年予算折衝は、すでに諦めムードが漂っている。農業補助金カットによりフランスを激怒させるほどの大幅譲歩案をもってしても、イギリスが一切の支出拡大を頑として認めない構えであるためだ。

 単年予算は多数決で決定できるが、7ヶ年予算は全会一致が必要であり、EU当局者はすでに法的に「イギリス抜き」で決議する方法をも模索し始めているという。ただしフィナンシャル・タイムズ紙は、「イギリス抜き」情報についての信憑性は疑っており、イギリスに妥協圧力をかけるための駆け引きかも知れないと論じている。

 各紙は、キャメロン首相にとってこうした断固たる拒否は、EU懐疑論も根強いイギリス国内でのメリットが大きいと解説した。フィナンシャル・タイムズ紙は、実際にイギリスでEU脱退の国民投票案が唱えられていることを取り上げている。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は、2005年、当時のブレア首相もまた同様の拒絶戦術を取ったことを挙げている。同紙は、支出削減はドイツを始め他のEU予算純貢献国も興味を示すところであると指摘した。ただし、「ユーロに影響を及ぼしかねない」南欧の経済政策緩和については強硬路線を取るドイツでさえ、EU予算を通しての南欧救済には比較的寛容であり、イギリスは予算合意への最大の障害となっていると報じた。予算折衝を主導する欧州理事会のロンパイ議長は、ブリュッセル入りする指導者それぞれと10分ほど顔を突き合わせての話し合いを持ち、妥協を奨励したいとしている。

 EU予算折衝の件とは別に、イギリスの余裕のなさを表す報道としてニューヨーク・タイムズ紙は、かつて国策として優遇されていたはずの、イギリスの大学の商業主義化について報じた。短期的に収益に繋がりそうな研究ばかりが奨励され、学費は急激に値上げされて貧困層の大学受験者が明白に減少しているという現状に、知識人層は「学生は消費者や顧客ではない」と危惧を募らせている。ウィレッツ大学担当大臣は、「教育はすでに偉大な英国の輸出産業である」と公言しているという。

Text by NewSphere 編集部