泥沼のシリア内戦―海外紙は隣国トルコ・イスラエルで高まる緊張に着目―
アサド政権と反体制派の内戦が20ヶ月以上続くシリア。これまでに4万人以上の死者、40万人以上の難民が生じている。戦闘はトルコ国境やイスラエル占領下のゴラン高原にも拡大している。12日には、トルコ国境に面する街で、シリア軍の戦闘機が国境付近を爆撃。少なくとも20人が死亡した。さらに、シリアからの砲撃に対し、イスラエルが「警告」としてミサイルを2日連続で発射した。これは両国停戦後の1974年以来の措置となる。
こうした状況下、反体制派の統一勢力「シリア国民連合」が発足した。アラブ連合をはじめ各国から承認を得始めている。
海外紙は、主にトルコ・イスラエルのシリアに対する異なる懸念に着目した。
【トルコ、シリア情勢を危険視】
シリア戦闘機によるトルコ国境での空爆について、ニューヨーク・タイムズ紙は、トルコ側の死傷者は確認できていないが、トルコ政府が反発を強めていると報じた。外務大臣が抗議文書を送るとともに、NATOに対する弾道ミサイル「パトリオット」の配備要請も辞さない構えだという。NATO側も、加盟国であるトルコを守る用意があると表明していることを、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
またフィナンシャル・タイムズ紙は、「シリアが化学兵器をトルコに向けて用いる可能性が高くなっている」とギュル大統領が警告していることを報じた。対策のためにはミサイル配備が必要とも述べており、強い危機感が伺える。
【イスラエルも警戒の構え】
一方イスラエルは、「シリア側が故意にイスラエルを内戦に巻き込もうとしている」と懸念を強めていると、フィナンシャル・タイムズ紙は報じた。「アサド政権が自国の問題から目をそらせ、アラブ諸国のイスラエルへの敵対心を刺激するため」の挑発ではないか、というイスラエル政府筋の見方をニューヨーク・タイムズ紙が紹介している。一方で、挑発の代償としてイスラエルの容赦無い攻撃が加えられる可能性もあるため、アサド政権はこれ以上の刺激は望まないだろう、という見方もある。