英HSBC銀行の四半期決算、数十億ドルの罰金覚悟―脱法のツケ払う英銀行界―

HSBC 5日、英HSBC銀行は第3四半期決算を発表した。同行はメキシコ麻薬資金のマネーロンダリングを許したとしてすでに7月、アメリカから非難されており、その和解金として7億ドルを用意しつつ米当局と交渉中であったが、和解金が20~30億ドルにも及ぶ可能性があり、このたびさらに8億ドルを積み増した。また、イギリス国内での支払保障保険の不適切な販売に関しても、顧客への補償金3億5千万ドル以上を追加し、準備金を13.6億ドルとしている。

 これらの準備金により第3四半期の利益は大幅に圧迫されたが、継続中の大規模なリストラの成果もあって元々の経営成績自体は好調で、調整後の税引前利益は倍増している。フィナンシャル・タイムズによると貸倒引当金は前期末の39億ドルから17億ドルへと大幅に減少、費用対収益比率は前年の50%以下からほぼ71%(アナリストは56%が正確と主張)へと上昇、財務健全性の指標コアTier1は年央点での11.3%から11.7%に上昇。またインタナショナル・ヘラルド・トリビューンはアジアおよびラテンアメリカでの好調を、ウォール・ストリート・ジャーナルは投資銀行部門の好調を報じている。

 しかしHSBCは刑事訴追を受ける可能性もあり、予断を許さない。インタナショナル・ヘラルド・トリビューンは、ガリバーCEOが深く遺憾を表明し、「大量の人々が銀行を去り、賠償に対してクローバック(不正利得報酬の返還請求)を受けました」と語ったことを伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナルは同じく「(マネーロンダリング疑惑は)間違いなくHSBCへかなりの風評被害をもたらしました」との言葉を伝え、また、規制やコンプライアンスのグローバル体制が厳しくなっていることでHSBCの年間コストにほぼ2億ドルから3億ドルの負担が加わっているとの財務取締役の証言を伝えた。

 HSBCだけでなく、スタンチャートやバークレイズなど、他の多数の英銀行も、やはり支払保障保険の不適切販売や市場操作疑惑などの問題で、補償金や罰金などの負担に苦しんでおり、体質改革を求められていることも各紙は報じている。必死の対策により最悪の状態は免れていることを指摘しているが、訴訟などのリスクはいまだに残っており、業績については余談を許さないという見方である。

Text by NewSphere 編集部