IMFフランス年次報告、競争力の欠如を指摘―海外紙は政府の見解に注目―

 国際通貨基金(IMF)は5日、フランス経済に関する年次報告で、包括的な構造改革を要請した。IMFはフランスの来年の経済成長率見通しを、同国政府による見通しの半分レベルの0.4%とした。また、「競争力の重大な欠如」により、見通しはさらに暗いと指摘した。
 この警告は、オランド大統領がルイ・ガロワ氏に委託した報告書と同調した。ガロワ氏は航空宇宙・防衛関連企業EADSの元CEOで、彼はこの報告書を「フランス産業衰退の厳しい診断」と呼んでいる。この報告書で彼は、給与税の大幅な削減を含む22の主な施策を提案し、世界経済競争におくれをとる国を「競争力ショック」と呼んだ。
 政府は6日、ガロワの報告書について見解を述べる予定だが、海外紙は、ガロワ氏の提案をどれだけ政府が採用するかに着目した。

 ガロワ氏の報告書は、政府が長期政策で強調していること―投資、技術革新、研究を深め、中小企業の発展を支援する―と一致している。しかし、給与税の削減について、政府は難色を示している。かわりに他の税金を増やす必要があるため、消費が落ちて不況に陥るおそれがあるためだ。報告書は、給与税の300億円の削減、もしくはフランスGDPの約1.5%に相当する380億円の削減を提案している。ニューヨーク・タイムズ(米)は、この提案を実行するためには至るところで穴埋めしなければならず、政治的に困難だと分析している。

 ガロワ氏の報告書は、輸出の促進と人件費の管理の面で、ドイツの成功からインスピレーションを受けたとウォール・ストリート・ジャーナル(米)はみている。オランド大統領はドイツに対してフランスの経済力を強化しようとしているが、ドイツの輸出が活況する一方、昨年、フランスの貿易赤字は700億ユーロを記録した。また、ドイツの柔軟な労働市場と適正な賃金要求は労働市場を再編してきた結果であり、フランスはまず労働市場の機能を回復しなければならないと指摘された。

 その他、シェールガス開発のさらなる研究に関して、ガロワ氏の提案は却下されるとフィナンシャル・タイムズ(英)はみている。オランド大統領は、フラッキング(水圧破砕)法を用いたシェールガス開発を拒否しており、環境保護主義者の強い反対もある。

 総じてガロワ氏の今回の報告書は、企業とサルコジ前大統領の民衆運動連合UMPから強い支持を得た一方、労働組合側からは批判も出た。モスコビシ財務大臣は5日、「政府はガロワの報告書に文字どおり従う必要はない」とテレビインタビューで述べた。

Text by NewSphere 編集部