英議会、EU予算削減要求を決議―与党造反、EUへの強硬姿勢高まる―
31日、イギリス議会は2014~2020年EU予算案について、支出削減を求める決議を可決した。決議に拘束力はないが、同国とEUの亀裂が深まるとみられている。
キャメロン首相は、「イギリスが公共支出削減を迫られるなど厳しい状況であるにもかかわらず、EU中央は放漫過ぎる」と考える議員たちと、支出削減には全く応じられないとする東・南欧諸国との板挟みにされる形だ。同首相は、予算案をいったん凍結し「インフレ率を上回る増額をさせない」との妥協案を提示していたが、野党・労働党からの賛成に加え、与党・保守党からも53人の造反者が出て、決議は可決された。
議会はもともと、同国の権威を取り戻すべくEUと距離をとりたがる保守党キャメロン首相と、さらなるEU統合推進派である自民党クレッグ副首相とが連立政権を組んでいる微妙な情勢にあり、イギリスとEUの決裂が不安視されている。
Financial Timesの報道姿勢―決裂は痛みが大きい―
新予算案が決裂すれば現予算がインフレ加算付きで自動継続されることになり、かえってイギリス納税者の負担は増すと指摘した。また決裂が癒えるには何ヶ月もかかり、次回サミットは2013年のドイツ総選挙後まで引き延ばされるのではないかとの見方も伝えている。
The New York Timesの報道姿勢―首相の劣勢―
首相の保守党はすでに世論調査で労働党に先行されていることから、「一層首相の癪に触っただろう」と伝えている。また経済危機によって、ヨーロッパ全体としてはEU統合強化の意見が強まる中、イギリス国内でも同じ理由で嫌EU派の勢力が増すと解説し、はっきりとEU離脱を打ち出している独立党が自民党の第3党の地位を脅かしつつある事実を挙げた。
The Wall Street Journalの報道姿勢―わがままで見放されるイギリス―
イギリスが10月15日に、2009年リスボン条約以前の、国際逃亡犯の逮捕状や警察データベースアクセスなどに関する警察・司法関連のEU合意について、その一部のオプトアウト(選択離脱)を検討し始めたと発表した件を重視。EUからの主導権奪還を狙ったにしても危険な駆け引きであり、EU諸国の側から見限られる結果を招き、かえってメリットを失いかねないと警告した。