フィアット、脱欧州市場の動き―自動車業界を襲う「カーマゲドン」―
イタリアの自動車メーカー・フィアットは30日、欧州での損失が拡大し、同域市場の低迷が長期化するとの見通しを明らかにした。ユーロ危機により、欧州の自動車市場は過去20年で最悪の落ち込みとなっている。この日、同社のマルキオーネCEOは、国内工場を閉鎖せず、「アルファロメオ」「ジープ」「マセラティ」などの高級車ブランドを強化するという新計画を発表した。
Financial Timesの報道姿勢―「カーマゲドン」を回避するため改革―
欧州の自動車市場の不況を「カーマゲドン」と表現した。この状況下で、フィアットのマルキオーネCEOは生き残りのため戦略を変更したと報じた。米国では高い需要があるため、欧州のカーマゲドンに影響されないとの同氏のコメントを紹介した。
なお、同社は工場を閉鎖しないよう政治的な圧力を受けていた。そんな中、国内工場の閉鎖を否定する今回の発表は、ユーロ危機や相次ぐライバルの削減計画に対する、これまでで最も重要なフィアットの答えであると注目した。
The New York Timesの報道姿勢―雇用維持戦略を評価―
マルキオーネCEOは、ライバルのフォードと全く異なる戦略方針を発表したと報じた。フォードは先週、欧州で3つの工場を閉鎖し、5,700人を削減すると発表している。ほかの欧州自動車メーカーもフォードの削減に追随するだろうというアナリストの予測があったが、今回のフィアットの決断は驚きであり、不況のイタリアにとっては朗報だと報じた。
また、マルキオーネ氏の、フィアットの子会社であるクライスラーが好調のため、同社は米国市場で復活できるという強気のコメントを紹介した。
The Wall Street Journalの報道姿勢―野心的な計画で、ヨーロッパ事業を救済―
今回のマルキオーネCEOの発表を野心的だと評し、欧州で新車需要が落ち込む中、工場を閉鎖せず、より高級なモデルをアメリカ、アジア市場の輸出に力を入れる同氏の計画はギャンブルであると報じた。これはフィアットブランドをヨーロッパの低価格志向の小型車市場で際立たせ、高級志向の小型車市場でニッチ分野を切り開きたいという野望のあらわれだと評した。しかし「製品主導の再建は懐疑的だ」とするアナリストのコメントも掲載した。また、フィアットの問題の1つとして、大型車市場での成功がないことを指摘した。