ウクライナ議会選挙、監視団が批判―維持される独裁体制―

ウクライナ首相 28日のウクライナ議会選挙について、欧州安全保障協力機構(OSCE)と欧州評議会議員会議(PACE)からの監視団は、現政権の職権濫用と金権にまみれたものと評価し、ウクライナの民主主義は後退したと批判した。
 欧米諸国はすでに、ユリア・ティモシェンコ元首相ら野党指導者が投獄されていることなどを問題視してウクライナとの貿易協定などの合意を棚上げしており、今回の選挙が自由公正に行われるかどうかがウクライナの民主性の試金石になると捉えていた。
 結果は29日時点でなお開票中であり、かつ集計プロセスの不透明さも指摘されているが、選挙区議席を中心にヤヌコーヴィチ大統領の与党・地域党が優勢であるという。同党の路線が元々ロシア寄りなこともあって、ウクライナと西側諸国の溝は深まるとみられている。
 また、極右・自由党の躍進も伝えられている。

Financial Timesの報道姿勢―自浄作用なし―
 国民の9%しかクリーンな選挙に期待していないという調査結果や、選挙管理当局が選挙違反に適切に対応していないとする指摘、「(世論調査の結果が優勢であるので)選挙が正当と判断されない事についてあまり関心がない」という地域党選挙責任者の発言など、選挙の浄化が望み薄な状況を伝えている。また、ウクライナが来年のOSCE議長国に予定されていることにも、懸念が寄せられるだろうと指摘した。
投票当日は雨で気温が低かったこともあって有権者の関心は薄いとし、「オレンジ革命(一度はヤヌコーヴィチ大統領を失脚に追い込んだ、2004年の大規模な選挙違反抗議運動)の再来には程遠い」と評した。

The New York Timesの報道姿勢―ナショナリストの躍進―
 「政治的反対者を収監し、小規模テレビ局に放送を止めさせておいて、好ましい進展などない」「問題が深すぎるので、選挙をやり直しても無意味」など、監視団の失望の声を伝えた。
また、反ユダヤ主義と人種差別主義を掲げるとする自由党の躍進を重視し、既存政党に幻滅して自由党を選んだ有権者たちの声を紹介した。
 なお政権の行方については、多数の無所属議員の動向にもよることを指摘している。

The Wall Street Journalの報道姿勢―西側に嫌われるウクライナ―
 ロシアはガスの安値供給を餌にウクライナをモスクワ主導の関税協定に引き込もうとしている、と説明した。一方、西側諸国はもはやウクライナに手を貸さないだろうとの、西側当局者らの見方を伝えている。
 また野党勢力の結集の可能性にも触れているが、自由党と他党の連携を警戒するイスラエルに対し、自由党党首は反ユダヤ主義を否定し、理解を求めているとも伝えている。

Text by NewSphere 編集部