海外口座リスト公表でギリシャの雑誌編集者逮捕―むしろ政府の怠慢に批判集まる―
28日、ギリシャの週刊誌ホットドックが、英国HSBC銀行ジュネーブ支店のギリシャ顧客リストを公開。数時間後に同誌オーナー兼編集者のコスタス・ヴァクセヴァニス氏がプライバシー侵害の疑いで逮捕され、さらに数時間後に釈放された。ここ数週間、国内ではリストの存在が疑われ、関心が高まっていた。
リストには元大臣や財務省職員、財界大物、俳優、ジャーナリストなどを含む2059の個人・法人の口座が記載されており、「ラガルドリスト」と一致するという。「ラガルドリスト」は、同銀行の元従業員が顧客データ24000人分を盗み出し、「海外口座を利用した脱税の可能性あり」としてフランス・イタリア・スペインの税務当局にリークしたうちの一部が、2010年、当時のラガルド・フランス財務相からパパコンスタティヌー・ギリシャ財務相に渡されたもの。
しかしギリシャ政府はこのリストを2年間放置し、経済情勢が厳しいにも関わらず脱税の事実を調査しなかったとして、ギリシャ国内ではホットドック誌よりむしろ政府に批判が集中している。また、今週予定されているギリシャ支援に関してのEUの会合へも、影響が懸念されている。
政府はリストの真偽に言及しておらず、リストに含まれたブルガラキス元大臣は一切の海外口座保有を否定している。パパコンスタティヌー元財務相や後任のヴェニゼロス元財務相らは、リストデータのオリジナルCDを紛失したようであり、ストゥルナラス現財務相はフランスにリストの再送を求めている。
Financial Timesの報道姿勢―慌てる政府、怒る国民―
「まるでギリシャのビジネスエリート名鑑」「すぐに徹底的な調査が必要です」との政府関係者の声を伝えた。財務省当局者によると既に別途、高額な海外送金例について、54000人のギリシャ人を調査しているところだったという。
また国債保有者や、賃金・年金カットに苦しむ国民は激怒したと論じ、ヴェニゼロス元財務相を「(捜査に手心を加えた)脱税の共犯者」とする左派政治家の声を伝えた。
International Herald Tribuneの報道姿勢―報道の自由に懸念―
釈放されるヴァクセヴァニス氏が大群衆の歓呼に迎えられたこと、インターネット上で釈放嘆願書に即刻1万の署名が集まったことなど、氏が世論に強く支持されている様子を伝えた。また、テレビ番組中で暴行を働いたファシズム党(「黄金の夜明け」)メンバーを警察が取り逃がしたのに対し、ヴァクセヴァニス氏の逮捕があまりに迅速過ぎる点などを指摘して、報道の自由に対する弾圧であると批判する論調である。
The Wall Street Journalの報道姿勢―プライバシー違反ではない―
100以上のローカルアーティストの納税に関する報道で別の新聞がプライパシー侵害に問われていない、とヴァクセヴァニス氏が指摘したことや、今回のような事例ではジャーナリストはプライパシー侵害での告発を法的に免除される、と氏の弁護士が指摘したことを伝えた。また野党サイリーザが、「告発者に対しては迅速に抵抗しながら、隠す人、失くしたという人、忘れたという人、見ていない聞いていないという人には二の足を踏んだ」と司法当局を批判したことを伝えた。