強気のドラギECB総裁のOMTに賛否両論
欧州中央銀行(ECB)マリオ・ドラギ総裁は24日、ドイツで連邦議員約150名と非公開会談を行い、スペインなどの救済のための国債無制限購入プログラム(OMT)に理解を求めた。
ドイツ首相や財務相はOMTを支持しているが、ドイツの連邦銀行や議会・国民には、インフレを招く、中央銀行が政府資金調達に関与すること自体規約違反、等々の不安が強かった。ドラギ総裁はそれらの懸念点にひとつひとつ、心配ない旨を説き、OMTこそ「唯一の手段」「完全に信頼できるバックストップ策」であるとして、ECBへの信頼を求めたという。
それでもなお、議員の間には懸念の声が根強く残ったが、ドラギ総裁の訪問およびその答弁姿勢自体は、党派を問わず歓迎された様子である。
Financial Timesの報道姿勢―様々な評価―
ドラギ総裁への評価は様々で、総裁(イタリア出身)は支持派議員からは信念に満ちた答弁を賞されて「南欧から来たプロイセン人」と称えられる一方、懐疑派議員からは「タカ(嫌インフレ派)の羽根の下に隠れたハト(インフレ容認派)」と評されたと伝えている。
ECB総裁の訪問は異例のことであるが、ランメルト議長は「(惰性習慣化したり、ブリュッセル本部での活動に支障がなければ)また折々ご来訪頂けばよい」と、歓迎の意を表したという。
The New York Timesの報道姿勢―「多くの議員が賛意を表明した」―
「タフな質問」は望むところだったとのドラギ総裁の声を引用し、不安を抱いていた多くの議員が「賛意を表明した」と報じるなど、結果的に議会が説得を受け入れたかのような評価である。
また、OMTに効果はあるが当該国の構造改革を伴わなければインフレ懸念が残るという、ドラギ総裁の言い分と一致する専門家の意見を引用している。
一方、ドイツの景況感が悪化し続けているデータを示して、ドイツの懸念も根拠のないものではないとした。
The Wall Street Journalの報道姿勢―いずれにせよ経済の不調は変わらず―
ドイツの提唱するやり方ではスペインやイタリアの国債金利高騰は止まらない、とするドラギ総裁の意見を伝え、逆に7月、OMTが発表されたときは実際に金利が急落したと指摘する。しかし一方で、それは失業率上昇などに苦しむ経済実体に関しては「何の助けにもならなかった」とも指摘し、またドイツ経済が悪化しつつあることを示すデータも紹介した。