レバノン国内対立激化-シリアの影響か?-
21日、レバノンの首都ベイルートで、親シリア政府の退陣を求めて反シリア派が抗議行動を展開した。一部暴徒化したために、政府が催涙弾などで対抗し、数名のケガ人が出た模様だ。この抗議行動は、19日の自動車爆弾テロで犠牲となったレバノン治安当局トップのウィサム・ハッサン氏の葬儀の後に行われたものだ。前首相テロ事件などに関与したと見られる親シリア派を捜査・逮捕したハッサン氏は、シリア側と見られる者から脅迫を受けていたことが分かっている。
レバノンの国内対立の構図と今後の影響は?
Financial Timesの報道姿勢―米大統領選への影響―
フランス(旧宗主国) の外相は、ベイルートの自動車爆弾テロに関するインタビューの中で、あらゆることがシリアの関与を暗示していると述べた。自国の内戦状態を、トルコ、ヨルダン、レバノンに拡大する意図があると指摘している。
また、そのようなアサド政権への対処をめぐって、オバマ政権がやり玉にあげられそうだ。3回目の候補者討論会でロムニー氏が、シリア問題に関するオバマ政権の無策を指摘する可能性がある。ロムニー氏はそれによって、オバマ政権の弱腰を印象づけようとの狙いがあるようだ。
今回の事件が大統領選に向けてオバマ政権へのマイナス要素となる可能性について報じた。
The New York Times の報道姿勢―対立の構図―
21日の反シリア抗議集会ではケガ人が数名しか出なかったが、レバノン各地で起きているスンニ派とシーア派の対立はより激しく、死者も伴う。政治的な対立の構図としては、スンニ派とドゥルーズ派、キリスト教徒がシリアを非難、スンニ派にもかかわらず親シリア派のミカティ首相とそれを支えるヒズボラはアサド政権と親密である。シリアは、レバノン前首相の暗殺に対する抗議によって撤退するまで約 30 年間レバノンを支配していた。今回暗殺されたハッサン氏の葬儀では、「独立を望む者は皆墓に入る」と述べた参列者もいた。
スンニ派対シーア派という構図に、混迷を極めるシリアとの関係が加わり、混迷した情勢だと報じている。
The Wall Street Journalの報道姿勢―対立の行方―
親シリア派のミカティ首相は、19日の自動車爆弾テロを理由に辞任を申し出たが、スライマーン大統領により、国内情勢の安定化のため留任を要請された。政府当局者の中には、テロの影響が今後一層強まり、国内が一層不安定になると懸念している者もいる。反シリアの政治家たちは、抗議行動が軍に鎮圧された後に主張をトーンダウンしているものの、依然として政権の退陣を要求しており、前首相の息子も政権打倒の構えを見せている。市民の中には、今後展開される抗議行動によって、スンニ派とシーア派の対立が一層深まると見ている者もいる。
レバノン情勢の先行きは、一層の緊張をはらんでいると報じた。