EU、イラン・シリアに制裁強化―深まる孤立―
15日、欧州連合(EU)は外相会談にて、核兵器開発が疑われるイランと、内戦が続くシリアへの制裁を強化することで合意した。
イランに対しては、同国からのガス禁輸、同国への黒鉛・金属・海軍および造船関係の機器・ソフトウェアの禁輸、銀行取引の全面禁止(人道支援などを除く)などといった措置を含む。すでに石油禁輸などの制裁が続いているにもかかわらず、イランとの交渉は進展がない状況であるが、EUは「交渉と圧力、両面を維持し続ける」としている。
シリアに対しては、同国への武器禁輸、同国兵器の運搬への関与禁止、シリア・アラブ航空全便の締め出し、特定人物らの渡航禁止や資産凍結がなされる。シリアに対する制裁は、紛争勃発以来すでに19ラウンド目に及んでいる。
EUは各国へ賛同を呼び掛けており、アメリカは同日歓迎を表明した。
Financial Timesの報道姿勢―すでに損得無視のシリア―
現状の経済制裁の影響でイランの通貨価値は急落しており、EUは経済制裁の効果に自信を持っていると伝えた。ただ、少なくとも11月の米大統領選までは交渉に進展はなさそうだとの観測もある。なお、EUの真の狙いは、イランを恐れたイスラエルの先制攻撃を防ぐことだとも解説している。
シリアについては、アサド政権はすでに生き残りを懸けた戦争状態に突入しており、自国の経済に関心を払っていない、とのEU外交筋の見方を伝えている。
The New York Timesの報道姿勢―イランの抵抗―
FT同様、イランの通貨価値急落や石油・自動車などの生産減、外国船の入港減を伝え、これまでの制裁の効果だとしている。EU側の「交渉を続けたい」「戦争を望んではいない」とのメッセージを強調する一方、イラン・ハメネイ師の、「イスラム」を持ち出した民族主義的な口調の制裁非難演説を引用し、対比させている。
The Wall Street Journalの報道姿勢―マリ情勢にも懸念―
EU外相会談がイラン・シリアへの制裁強化に加え、今年軍事クーデターが発生したマリ情勢にも触れたことに言及している。EUは、アフリカ主導によるマリ北部の治安回復作戦に対し、軍事訓練の提供を検討しているという。