メルケル独首相のギリシャ訪問 ギリシャ国民は大反発
9日、ドイツのメルケル首相が5年ぶりにギリシャを訪問し、今後のギリシャ経済を支援していく意思を伝えた。メルケル氏はギリシャを「よき友であり、真のパートナーである」と表現し、友好的な姿勢を示した。同様にギリシャのサマラス首相も、「彼女の訪問のおかげで、我々はEU内での孤立状態から抜け出し、今後もEUにいることが出来る。」と前向きなコメントをした。
一方ギリシャの国民は、メルケル首相が緊縮財政を強いたと考え、強い反発を示している。9日には3万人ものデモ参加者がアテネに押し寄せた。始めは穏やかなデモだったが、最終的には催涙ガスなども飛び交い、200人が拘束されるものとなった。またナチスの旗や服装などをきて、デモに参加する人もいた。
今後の動向について、メルケル首相は、ギリシャの厳しい状況を理解したうえで、緊縮財政を求め続けていく方針である。
果たしてメルケル氏の政策は功を奏するのか?ギリシャ経済の今後は?
Financial Timesの報道姿勢―国民の反発の声を報道―
ドイツの政策がギリシャの国民を苦しめているという考えから、メルケル氏を非難するギリシャ国民の様子を取り上げた。「お前は、ここに歓迎されていない」などと書かれた横断幕を掲げながらデモが行われている様子や、「何ももたらさず何も持ち帰ることのない無益な訪問であった」という厳しいコメントを報じた。
The New York Timesの報道姿勢―政治関係者は前向き。国民は納得せず―
政治関係者の考えと国民の考えを比較するような形で報じた。
政治関係者はメルケル首相の訪問に良好な効果があったと分析している。欧州政策センターの専門家は、メルケル首相の訪問は市場やEU全体の統合にも効果を及ぼす、と評価した。メルケル首相自身は、EUの問題をEU全体で解決していくことの重要性を何度も述べ、訪問の意義を強調した。サマラス首相も、ギリシャ崩壊の危険性が軽減され、今後もEUに加わることが出来た、と評価する発言をしている。
一方で、国民の意見は政治関係者とは異なるものだった。3年前から始まった緊縮財政で、GDPは25%減り、24歳以下の失業率は50%近くとなった。給与や健康補助なども減少し、国民の生活は貧しくなる一方である。そのためギリシャ国民は、「ドイツの政治家は私たちの国を崩壊させた。今のままでは、経済は良くならない」と強く非難し、緊縮財政の効果にも懐疑的な意見を述べている。
The Wall Street Journalの報道姿勢―両首相の会合は互いに好影響―
サマラス首相は資金援助を受けるために緊縮財政を行わねばならず、議会での投票は厳しいものになることが予想されている。その中で、アテネ大学の教授は、メルケル首相の訪問は投票に好影響を与えると分析した。彼はメルケル首相の訪問により、緊縮政策をすることの正当性が高められたと指摘した。
またメルケル首相にとっても訪問は良い効果があった。彼女はギリシャに対する対応が冷たいと非難されていたが、訪問して同情の色を見せることによって、その批判から逃れる目的があったと分析している。