IMF、世界経済見通し下方修正―その要因とは―

ラガルド専務理事 国際通貨基金(IMF)は9日、2012~13年の世界経済見通しを下方修正した。12年の世界の成長率は3.3%で、7月時点より0.2ポイント引き下げ。13年は3.6%への回復を見込むが、こちらも0.3ポイント下方修正されている。日本も、12年の成長率は2.2%で0.2ポイント引き下げ、13年は1.2%で0.3ポイント下方修正された。
 ユーロ圏は12年に0.4%のマイナス成長が見込まれる。イタリア、スペインは大幅に下方修正され、ドイツも13年の成長率は引き下げられている。
 新興国の高成長にも陰りが見られる。12年の中国の成長率は7.8%で、0.2ポイント下げた。インドやブラジルについては1ポイント以上下げられている。

Financial Timesの報道姿勢―緊縮財政の副作用を懸念―
 世界経済の回復を阻んでいる大きな要因として、アメリカ・EUの財政政策不調を挙げた。IMFが下方修正した成長率も、アメリカが「財政の崖」(減税時効+大幅歳出カットによる不景気)を回避し、EUがECBの救済策を有効活用することが前提となっている。そのため、この状況が一時的なものか、これから落ち込む一方なのかは、アメリカ・EU次第だとIMFは示唆している。なおFTは、中国などの成長率減については、政策の効果により、ゆるやかに安定化できると楽観視している。

The New York Timesの報道姿勢―先進国の停滞を懸念―
 来年不況になる確率について、アメリカは15%、日本は25%、EUは80%以上と予測されていることを報じた。市場からの圧力、政府支出削減、高失業率、政権の不安定さなどが主なリスクだと指摘した。特に、アメリカやドイツなど先進国の経済見通しを懸念している。これらの影響で、中国やインドをはじめ新興国の成長率が鈍化していると分析している。また、IMFが各中央銀行(EUのECB、米FRB、日銀)の緩和策を評価していることも報じた。そのうえで、特にアメリカは「財政の崖」のリスクが大きく、政治的に有効な解決へ導くよう、IMFのトップが警告していることを取り上げた。

The Wall Street Journalの報道姿勢―3年前より深刻な世界不況の可能性―
 世界不況に突入する可能性が高く、リーマン・ショック後より複雑化していると報じた。2009年の不況時には、IMFは各国に積極的な財政出動を呼びかけた。今回は状況が異なり、ユーロ圏の債務国などは緊縮財政をとり、歳出を抑えなければならない。IMFは、緊縮財政が急速かつ広範囲で行われたことが経済減速の要因とみており、景気に影響が出ないよう、緩やかに進めるべきだったとみている。
 またWSJは、IMFの予測はアメリカ・EUが有効な対策を行う前提であり、民間のものより楽観的なものだと指摘した。

<参考リンク>
東京での国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会に先駆け、『ワールド・エコノミック・アウトルック(WEO)』が公表された グローバルなリセッションのリスクが増した
(広瀬隆雄)
下方修正された世界経済の見通し(大甘のIMF)
(小笠原誠治)

Text by NewSphere 編集部