イランの通貨レアルが過去最安値-制裁が影響
イランの通貨レアルが、非公式市場でドルに対し過去最安値を更新した。イラン国内ではインフレが急加速しており、国民は外貨の購入に走っている。
米国防省やホワイトハウスは、これを国際的な制裁の成果と評価した。EUによる原油禁輸措置や、アメリカの銀行関連の制裁措置が効を奏したとしている。
イランのアフマディネジャド大統領は、イラン経済への制裁の影響を初めて公式に認めた。さらに、国内にも経済を悪化させようとする存在がいると言及し、国民に冷静な対応と協力を求めた。大統領は、中央銀行には十分な外貨の備蓄とこの難局を乗り切るビジョンがあると述べ、制裁の原因となったウラン濃縮についても続けるとした。
Financial Timesの報道姿勢―アメリカ・現政権・政敵…三者の思惑―
FTは、イランの通貨暴落に絡む三つ巴の争いに焦点を当てた。イランの通貨急落と物価急騰により、イラン国内は混乱している。それについて、アメリカ側は経済制裁の成果と評価していると伝えた。さらに、イランでは大統領の就任は2期までしか認められていないが、身内を後継者に据えようとする現大統領の思惑と、それを阻止しようとする政敵の存在を紹介。大統領は、公式見解として一部制裁の影響を認めつつ、悪いのは政府ではなく国民を苦しめる西側諸国だと非難した。さらに、国内にも、市場の混乱を誘い、現政権を揺るがして政権奪還を狙う「敵」がいるとする強気の姿勢だと報じた。
International Herald Tribuneの報道姿勢―汚名返上に必死の大統領と核開発の行方―
IHTは、イランを襲う諸問題に対する大統領の弁明を中心に紹介した。
大統領は「国民を苦しめる」アメリカと、「苦境をあおりながら責任を現政権になすりつける」内なる敵を激しく非難していると伝えた。さらに、制裁の原因であるウラン濃縮計画についても、武器使用には適しない20%という濃度を超える意図はないと明言し、その供給が得られるなら、開発から手を引くとしているという。
とはいえ、大統領は現実的な対応策を示してはおらず、国民の不安は払しょくされていないと指摘した。さらにウラン濃縮についても、イランの有力な国会議員には、武器使用に近づく60%を目指すという挑発的な姿勢もあることを報じた。
The Wall Street Journalの報道姿勢―経済制裁がイランの金融事情におよぼした、かつてない危機―
WSJは、イランが従来抱えていた為替事情への経済制裁の影響に着目した。もともとイランの為替には、政府公式レートと非公式な市場レートが存在した。現実を反映しているのは市場レートだが、中央銀行が備蓄外貨を注入することで二つの乖離を避け、下支えするという二段構えだったと紹介した。
ところが今回、金融制裁によって備蓄が減り、中央銀行は外貨を放出できなくなったと指摘。そのため混乱が広がり、商業取引も滞る事態になっていると報じた。大統領は失政の非難を打ち消し、事態を打開しようと懸命だが、国民の外貨購入の動きには歯止めがかかっていない。中央銀行の政策転換によって外貨が入手できなくなった国民のあいだには不安と不満が渦巻いている、と報じた。