中国初の空母就役―「空母は平和の象徴」なのか?―
25日、中国初となる空母「遼寧」が海軍に正式配備された。大安で開催されたセレモニーには、胡錦濤国家主席や温家宝首相なども参加した。温家宝首相は、防衛作戦能力増強、国家主権の維持、さらには世界平和の促進に重要な意義を持つと強調した。国営メディアである新華社も、「武力を用いて他国を脅すことはしない」と論じた。
政治的な側面では、近日開催予定の党大会にも影響を及ぼす。空母の就役によって、国力増強とアジア太平洋地域への影響力強化を国民にアピールし、愛国心を呼び起こす効果があると各紙は分析している。
空母「遼寧」の実力はどれほどのものなのか?日本に与える影響はどうか?各紙の報道から読み解く。
Financial Timesの報道姿勢-空母「遼寧」の役割-
空母「遼寧」は、基本的に訓練と中国近海の任務に活用されるとした。加えて、日本と尖閣諸島領有権問題に対する対立が続く中、威嚇のシンボルとして使われる可能性もあると指摘した。
なお、尖閣問題については日中外務次官会議が行われている。中国の張外務次官は日本の「過ち」を正す具体的な行動を要求する強硬姿勢であり、今後の見通しは不透明だ。
International Herald Tribuneの報道姿勢―他国の専門家の分析「使い道ない」―
米国海軍は重要視していない旨を報じた。中国の軍事力は米国には到底かなわないことを示唆するジョークも取り上げた。また他国の専門家も、空母「遼寧」は、着陸訓練がまだ行われていないなど、軍事的な効力はないと分析している。米国に対しては歯が立たず、近隣の新興国に使えば「いじめ」とみられるとし、「使い道がない」とコメントを掲載した。
The Wall Street Journalの報道姿勢―東南アジアやアメリカの視点―
日本との尖閣諸島問題に加え、フィリピンやベトナムとの南シナ海の資源を巡る緊張にも触れた。ベトナムが大型の潜水艦をロシアから購入したこと、フィリピンがアメリカに防衛措置を要求していることなどを取り上げた。
またペンタゴンは、中国の軍事支出が前年比11%も増加しており、現在約75機の主要水上艦と約60の潜水艦を保持していると分析した。さらに、独自に新たな空母の開発に着手している可能性もあると指摘した。
空母を平和の象徴として考えるのは無理がある。海外各紙は中国の軍事力を分析し、現在は米国に及ばない(IHT)とみている。ただ、年々軍事費を増加する中国への懸念を示す見方もある。尖閣問題で、日本の政府が「遺憾」、マスコミが「冷静に」といっている間に、中国は着実に手を打ってきている。事実を踏まえて対応策を考える必要がある。