日銀、10兆円の追加緩和策を発表
日銀は19日、資産買い入れ基金を10兆円増額する追加緩和措置を発表した。2013年12月末までに80兆円を目指し買い入れを進める。内訳は長期国債が5兆円、短期証券が5兆円。長期国債については、期限を2013年6月末から12月末へ延長する。さらに、応札額が予定額に達しない「札割れ」を回避するため、下限金利(年0.1%)も撤廃する。景気判断も「持ち直しの動きが一服している」に下方修正した。
<各紙の報道>
FTは、日銀の追加緩和策について、大胆だが効果に疑問を呈するとみている。背景として、欧州中央銀行(ECB)と米FRBの相次ぐ緩和策により、円高圧力がさらに強まっていると指摘した。保守的と評される日銀は、10月まで新たな対策を発表しないと見る声もあったが、安住財務相が「予想以上」と評すような大胆な緩和策を発表したと報じた。しかしその後の円安・株価の上昇は一時的なものに留まり、発表の効果は短期的だったと指摘した。また別の記事では、今回のスピード判断の背景を分析した。具体的には、白川日銀総裁が大阪でパナソニックやシャープなど円高に苦しむメーカーの窮状を目の当たりにしたこと、任期切れが近づき、政治関与を強める自民党が政権を担う可能性を危惧したのではと考えている。
IHTもFT同様の評価であり、効果に懐疑的な声を多数掲載している。政府のデータから、日本の景気回復の遅れは世界経済不況の煽りを受け、特に輸出産業にとって厳しい状況であることを指摘した。最大の貿易相手国である中国において、尖閣問題をめぐり反日デモなど政治・社会的リスクが高まっている点にも言及した。そもそも長期的なデフレ傾向が続いていることも指摘している。
WSJは、日銀やアナリストのコメントを多数掲載し、追加緩和策の詳細、ねらい、背景、今後について分析した。今回の素早い緩和策の発表は、ECBとFRBの発表を受けたもので、「競争的緩和策」に陥るリスクを懸念する声が多数あると指摘した。今回の決定に際し、白川総裁は、特に近年の中国経済失速が議論の中心だったとコメントしている。一方で日中政治対立の影響はないとも述べており、理由としてはそれを判断するのは早すぎるとした。
<参考リンク>
以下、BLOGOS掲載ブログより
■「思い切りの悪い遅きに失した」日銀追加金融緩和 ~ 政府、及び今や圧力団体と化した財界に対するアリバイ工作
(近藤駿介)
■日銀は相乗効果型追加緩和を実施
(久保田博幸)