「絶対にやめて」 SNSで拡散中の「ビールを塗ると綺麗に日焼け」に皮膚科医が懸念【解説】

画像はイメージ(Flicker/ Hilary Perkins

TikTokでは日々、新たなトレンドが生まれています。

【動画】「危険」だと言われている「beer tan」

主に海外で拡散されているのが、ビールを体に塗って日焼けをする「beer tan」という行為です。

ですがNewSphereの取材に応じた皮膚科医師は、「絶対にやめてもらいたい行為」と警鐘を鳴らしています。

ビールを塗って日焼けする「beer tan」の危険性

投稿者たちいわく、ビールに含まれるホップが、肌に色素沈着をもたらすメラニンを活性化させ、綺麗な小麦色に日焼けできるそうです。

TikTok上では「とても簡単で安上がり」「ビールも味わえて、最高の方法だね」との反応が寄せられています。

ビールを塗ると日焼け効果が増すことはあり得るのでしょうか。

NewSphereは、銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子医師に、「beer tan」について解説してもらいました。

慶田医師は、「beer tan」をする人が考えているような、「ビールを塗るときれいに焼ける」ことはないと言います。

「米国食品医薬品局 (FDA) によると、推奨される日焼け止め(サンスクリーン剤)の最小SPF値(紫外線B波の防御効果)は15と言われています。

そもそも、ビールを皮膚に塗るというのは目的外の行為なので、日焼けを促進する効果も、日焼け止め効果があるという研究報告もこれまでに見当たりません。

ですから、ビールを塗っても、綺麗に日焼けするとは考えにくく、日焼け止めを塗らずに日焼けすることで生じる健康被害が心配です。

なぜなら、過度の紫外線曝露は、早期老化や皮膚がんに繋がるからです。

実際、米国がん協会は、米国内で毎年診断される100万件以上の皮膚がんのほとんどが、太陽光への曝露が関与していると報告しています。

紫外線の皮膚障害が世界的に認知され、WHOはじめ世界中の皮膚科医が、日焼けマシンや太陽光に含まれるUV暴露による発がんなどの皮膚障害に関して様々な方法で警鐘を鳴らしています。

そのため、商品によって異なるので一概には言えませんが、現在、多くの日焼けローションには少量の日焼け止め成分が含まれているはずです。

危険な日焼けを避け、少しずつ肌を黒くする目的の日焼けローションと比較すれば、紫外線吸収剤も紫外線散乱剤も含まないビールはダイレクトに日焼けするので、良く焼けるでしょうが、当然、肌老化や発がんのリスクも高くなります。

ビールの臭いに引き寄せられて虫が寄ってくる可能性もあるでしょう。また、揮発したアルコールを小児が吸引してしまう危険性も無視できません。

即刻止めて頂きたい行動です(慶田医師、以下同)

「beer tan」をしている人を見ると、ビールを塗るだけでなく、太陽光を浴びながらごくごくと飲んでもいます。

慶田医師は、飲酒と日焼けを組み合わせる行為の危険性についても指摘しました。

「ビールに含まれる糖分と、アルコールの作用で体内の糖化を促進させることがわかっています。

糖化は、老化の一大原因でもありますし、紫外線暴露や喫煙など酸化ストレス下では相悪作用で進行することも。飲酒をすると日焼けしやすくなるとも言われているため、飲酒と日焼けは最悪の組み合わせなのです」

日焼けそのものをしないに越したことはないものの、「夏はきれいに焼きたい」と考える人もいることでしょう。

もし日焼けをしたい場合、どのようなことに注意が必要なのでしょうか。

「日焼け止めを塗り、日陰で少しずつ太陽光を浴びる場合は、紫外線による皮膚の急性障害(サンバーン)のリスクを少なくすることができます。

米国がん協会は、どうしても肌を小麦色に、『かっこよく焼きたい』という人に対し、SPF30の日焼け止めを塗ったり、頻繁に体位を変えたり、日光に当たる時間を制限したり、日中の最も紫外線が強い時間帯を避けたりすることをお勧めしています。

SPF30程度の日焼け止めを塗れば、木陰やビーチパラソルの下で短時間過ごすだけでも、十分綺麗なブロンズ肌になれると考えられます。

ですがもちろん、弱い紫外線でも、長時間の積み重ねで光老化は進行します。

特にメラニン活性の低い白色人種や、日本人でも日に当たるとすぐに赤くなる人は、発がんリスク、シミやシワなどの老化リスクが高いので、浴びないに越したことはないでしょう」

暑い時期になると、キャンプやゴルフ、ビーチなどアウトドアをして「うっかり焼けてしまった」という人も多いはず。

残念ながら、どのような美白製品を用いても、日焼けの害をなかったことにはできません。次はうっかり焼かない十分な準備が必要です。

また冬や雨の日でも、紫外線対策は必要と言われています。

最近では「シミやシワを防ぐ」といった、美容成分が含まれるスキンケア効果の高い日焼け止めも発売され、ベタつかないものも増えてきました。

数年後、十数年後に後悔しないためにも、日頃から日焼け止めを意識していきたいですね。

銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子医師

⚫️慶田朋子  

銀座ケイスキンクリニック院長 医学博士

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医

1999年、東京女子医科大学医学部卒業。

同大にて皮膚科助手、美容クリニック勤務などを経て、2011年に銀座ケイスキンクリニックを開設。

最新の医療機器と注入治療をオーダーメイドで組み合わせ、「切らない®ハッピーリバースエイジング」を叶える美容皮膚科医として多くの患者から厚い信頼を得ている。

学会や論文などで、新しい皮膚科学を常に学び続け、発信を続けている。著書に「女医が教える、やってはいけない美容法33」(小学館)など。

銀座ケイスキンクリニック
〒104-0061東京都中央区銀座1-3-3 G1ビル5F・6F
0120-282-764(びはだになるよ)
完全予約制。
診療時間:月~土11:00~19:00
休診日:日曜祝日
https://www.ks-skin.com

Text by 春野 なつ