上半身裸を理由に職質を受けた外国人観光客… 「暑くて裸で過ごす」は公然わいせつになる?

shearingshedvlogsさん投稿のスクリーンショット(本人許可済み)

警察官から職務質問を受けるのは、ドキッとする出来事。

交番前を通過したり、警察官とすれ違ったりする時に声をかけられないかと、身構える人もいるでしょう。

オーストラリア出身の旅系インフルエンサー、トゥラン・ウィリアム・サリス(shearingshedvlogs)さんは日本を旅行している最中、警官から職務質問を受けたことを自身の TikTokで明かしました。

日本を旅行している最中、職務質問を受けた外国人観光客

@shearingshedvlogs Replying to @Galaxy I did not know that it was against the law to be shirtless in Japan. After I gave them my passport they let me carry on with my livestream #police #japan #viral #foryoupage #foryourpage ♬ original sound – ShearingShedVlogs

トゥランさんは、店内で撮影をしていると突然、警察官から職務質問を受けたといいます。

警察官は、スマホの通訳アプリを介して「ちょっとお話を聞きたいのですが」とトゥランさんに話しかけました。

警察官は続けて「あなたは上半身裸で歩き回っていましたか?」と尋ねます。

トゥランさんは「下は履いていましたが、シャツ(タンクトップ)は着ていませんでした」と返答。

警察官から、「街中で上半身裸になることは許可されていないのです」と説明されたトゥランさんは、「ビーチに行ったため」と謝罪しました。

警察官から質問を受けている最中も、トゥランさんは動画を撮影していることから、どうやらライブ配信をしていたようです。

パスポートを確認すると警察官は、ライブ配信の継続を寛容に許可。

トゥランさんは、「日本人は理解がある」とコメントしています。

旅行中、所持品がむき出しのままベンチで寝入っている日本人を見て「僕の地元だったらあり得ない」と日本の治安の良さに触れたトゥランさん。

ほかの動画でも、「スマホを片手で持ちながら街中を歩けるなんて、安心感がすごい」と感激しています。

トゥランさんの投稿に対し寄せられたコメントの中で、最も多かったのは「日本の警察官は優しい」というもの。

ほかには通訳アプリでの英語対応を褒めたり、警察官のプロ精神の高さに感心したりするコメントも多くみられました。

上半身裸で過ごすことは罪に問われる?

街中で上半身裸になっていたことで、職務質問を受けたトゥランさん。

今回は職務質問だけで済みましたが、街中で上半身裸でいると、罪に問われることはあるのでしょうか。

NewSphereは、真和総合法律事務所に所属する松下真由美弁護士に解説してもらいました。

「男性が街中で上半身裸になっていたことだけで、直ちに罪に問われる可能性は低いと思います。

該当する可能性がある犯罪としては、公然わいせつ罪(刑法174条)、軽犯罪法違反(1条20号)、都道府県の迷惑防止条例違反が考えられますが、上半身裸になっていただけでは、これらのいずれの要件にも該当しないと思われます(※詳しくは下記に記載)。

動画は部分的に切り取られており、やり取りの全てがわかるわけではないですが、動画の警察官は、あくまで任意の職務質問を行っただけであり、その様子を映したものではないかと思います。

ただ、直ちに犯罪にあたらなくてもモラルの問題はあります。街中を上半身裸で歩く男性に対し、中には恐怖を抱いたり、不快に思ったりする人もいるかもしれません。

警察官からの注意にずっと従わない場合には、何らかの犯罪の可能性が疑われるとして、さらに聴取が続くこともあると思いますので、今回の動画の方のようにきちんと事情を説明し、注意を受け入れるべきでしょう。

※犯罪に該当しないことについての説明

可能性としては、公然わいせつ罪(刑法174条)、軽犯罪法違反(1条20号)、都道府県の迷惑防止条例違反が考えられると思いますが、男性が上半身裸になっていただけでは、いずれの要件にも該当しないと思われます。

まず、公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為をしたときに成立しますが、男性が上裸になることが、わいせつな行為(性欲を興奮または刺激させ、普通人の正常な性的羞恥心を害するような行為)とまでは認定されないと思います。

次に、軽犯罪法1条20号では、『公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしたり、その他身体の一部をみだりに露出した者』に対して処罰を科していますが、今回のように男性が上裸になることが『公衆にけん悪の情を催させるような仕方で露出した』とまでも言えないと思います。

次に、各都道府県の迷惑防止条例には、公共の場所でひわいな言動等をすることが禁止され、罰則が定められている場合が多いです。

ただ、『ひわいな言動等』とは、人を著しく羞恥させたり人に不安を覚えさせたりするような性的な言動等を指しますので、今回のように男性が上裸になることが直ちに『ひわいな言動等』をしたと認定されることもないと思います」(松下弁護士)

暑い時期になると、河川敷などで上半身裸になりながらランニングをする男性も見かけることでしょう。

街中と河川敷で、罪に問われる可能性に違いは生じるのでしょうか。

「先に述べた通り、街中でも直ちに罪に問われる可能性はまずないですが、川原ではさらにその可能性は下がると言っていいでしょう。

同じ公共の場所でも、川原では、泳いだりするために上裸になる可能性もあることが、普通の感覚からすれば想像できると思います。そのため、人の性的羞恥心を刺激したり、嫌悪感を催させたりするおそれが低下すると考えられるからです」(松下弁護士)

犯罪に問われることはないものの、モラルの観点から街中では暑くても服を着ていた方が無難ですね。

Text by 本間才子