日本、若いイスラム教徒の旅行先3位に 進む受け入れ態勢の整備
ミレニアル世代のムスリムがよく訪れる旅行先として、日本は世界で3番目となった。これはマスターカードと旅行サイトアプリのハラルトリップの共同調査によるもので、1位と2位には、ムスリムが多数を占めるマレーシアとインドネシアが名を連ねる。両国に続いて非イスラム圏の日本がランク入りしたことは驚きだ。
若いムスリム旅行者たちの経済効果は2025年までに11兆円を超えるという試算もあり、観光業界を中心に対応の動きが広がっている。
◆旅行の動機はムスリムも同じ 日本に魅力を感じる若者が増加
日本が旅行先に選ばれている理由としては、特段ムスリム固有の文化的背景があるわけではないようだ。ビジネス・インサイダー誌(10月27日)はある旅行コンサルタントの見解として、「彼らは単純に『すでに体験したり試したりしたことはやりたくなく、新たに注目されている正統派の旅行先』を求めている」と伝える。多くの訪日旅行客同様、日本の伝統や文化に純粋に興味を持っているからとのことだ。
なお、アジア地域には、世界のムスリムの半数以上が居住していると言われている。地理的に身近な旅行先としても選ばれているのだろう。
一方で日本はムスリム文化への対応を進めており、それに対する認知度も上がっているようだ。アラブ首長国連邦のハリージ・タイムズ紙は、モスク、祈祷室、ハラル対応レストランなどの存在を挙げ、日本での環境整備を歓迎している。数年前までは日本はハラル・フレンドリーではない国との認識が濃かったが、事情は急速に変わりつつある。
◆増えるハラル対応レストラン 食材の輸入という秘策
ハリージ・タイムズ紙は、日本の空港やホテルなどでハラル対応店舗が増え、世界各国の料理を楽しめるようになったと紹介している。ムスリム国から輸入した冷凍食材を使用することで、ハラル対応を柔軟に実現しているレストランもあるようだ。もちろん冷凍食品だけでなく、焼き肉や寿司など、日本固有の味をムスリムの戒律に従って調理する飲食店も増えているという。
旅行業界誌TTGアジアの記事は、具体例として、鉄板焼きチェーンの例を紹介する。「元祖 鉄板焼ステーキみその」神戸本店では、認証機関の試験に合格したハラル専用メニューを用意しているとのことだ。こうしたハラル・フレンドリーな店舗は同社以外にも増えており、特に東京と大阪の近隣府県であれば探すのに苦労はないという。昨年のムスリム旅行者は2400万人に上ったとのことで、ハラルフードは一つの大きな市場を形成しつつあると言えるだろう。
◆食べ物だけではない 見落としがちな宿泊環境の整備
ムスリム旅行者の増加に伴い、積極的な対応を行う宿泊施設も出ている。TGGアジアが紹介する山形の「月山ポレポレファーム」では、休憩所を祈祷室に改装したほか、調理器具を変更するなどの改良を行なった。観光のゴールデンルートからは外れているが、受け入れ態勢を整えた結果、ムスリム旅行者は3年間で40倍となる2000人にまで増加したようだ。
また、ハリージ・タイムズ紙の別の記事では、中長期滞在者向けのソリューションを挙げている。シェアハウスなどを運営する「さくらハウス」では、東京にあるモスクの近くにムスリム向けの物件を設け、さらに物件内に祈祷室を確保するなどして利便性をアピールしているようだ。
ビジネス・インサイダー誌では、日本の和食のハラル対応は世界でも抜きん出ていると評価する。一昔前はレストランなどで豚肉を使用しているかどうかさえ表記がないという嘆きをよく耳にしたが、変化は確実に起きているようだ。