欧州行くならホテルよりバケーションレンタルを! 知っておきたい利点と注意点

 歴史、アート、グルメ、ショッピング、そして美しい自然。ヨーロッパの旅が約束してくれるのは、かけがえのない体験。しかし一つだけ不満がある。それは、ホテルである。3つ星、いや4つ星ホテルでも、猫の額のような狭さ。もちろん、5つ星ホテルを選べばそれなりに快適だが、1泊4万円、5万円と、毎日払うには厳しい。広くて安く、便利に泊まれる方法はないのだろうか。

 そこでおすすめしたいのが、バケーションレンタルだ。コンドミニアムや別荘を1日単位で借りる仕組みである。筆者はここ数年、欧米で数十ヶ所のバケーションレンタルに泊まってきたが、あまりの快適さに、もうホテルには戻れなくなってしまった。「Booking.com」や「Expedia」などのホテル予約サイトでも、口コミ上位に来るのはバケーションレンタルばかり。その理由を探ってみよう。

◆街の中心地で地元の暮らしも体験
 筆者の考えるバケーションレンタルのメリットは以下の4点だ。

1. 広くて快適
 バケーションレンタルは、最低1LDK以上のコンドミニアムが多い。ソファのある広いリビングでくつろげるし、2ベッドルーム以上の部屋を選べば、プライバシーも完璧。

2. 設備が充実
 コンドミニアムには、キッチンや洗濯機が標準装備されている。たまにはスーパーで食材を仕入れて、地元の人たちが暮らしているように食事を楽しむのもいい。もちろん、たいていのバケーションレンタルでは近隣のレストランの情報も充実している。地元の人が勧める店は安くて外れがないから、ぜひ利用してみたい。

3. 一等地でも安い
 筆者がこれまでに泊まったバケーションレンタルは、パリのルーブル美術館の近くやローマのスペイン広場付近など、超一等地が多い。必ず2ベッドルームを取るようにしているのだが、いずれも1泊100~150ユーロ程度と格安だった。

 個人旅行では、立地はとても重要である。わずか数日間の滞在だと、移動時間を節約できるかどうかで旅の体験が大きく変わるし、中心地に宿を取っておけば、疲れたときでもすぐに部屋に戻れる。

4. 手軽に予約
 ホテル予約サイトやバケーションレンタル専用サイトなどで、ホテルと同様に気軽にオンライン予約ができる。

◆利用時の注意点は?
 こうして見てくると、ホテルなどいらないように思うが、もちろん良いことばかりではない。バケーションレンタルを試す際に注意したいことも添えておこう。

1. フロントがない
 バケーションレンタルはフロントがないため、オーナーや管理会社から鍵を受け取って部屋に入るのが普通だが、立会いの時間が短いことが多いので注意が必要だ。時間外のリクエストをすると、数十ユーロを別に請求されてしまう。また、チェックインに先立って、到着時間や電話番号の連絡など、英語でのやりとりが必要になる。さらに、チェックアウト後にスーツケースを預かってくれないなど、ホテルよりはなにかと面倒。

 筆者は一度、ベネチアの空港で船に乗り遅れてしまい、夕暮れ時に宿の人を船着場で30分待たせてしまったことがあった。携帯電話をなくしてしまいホストに連絡できなかったのだが、迷惑をかけたし悪い評価を受けてしまった。24時間営業のホテルでは起こらない問題だ。

2. 追加費用
 予約サイトに表示される支払額のほかに、清掃代や手数料の名目で別途費用がかかる場合がある。清掃代は滞在日数にかかわらず一律同料金なので、1-2泊の滞在だと意外に割高になってしまう。

3. エレベーターの有無
 ヨーロッパは建物が古く、エレベーターを設置していないコンドミニアムが少なくない。個別の物件紹介をよく見ると書かれているが、検索条件にエレベーターを含めることができるのは「TripAdvisor」などごく少数。筆者も初めのうちはエレベーターをチェックしておらず、スーツケースを抱えて5階まで階段を昇降する羽目になったことがあった。

4. ルーズな貸し手に注意
 「Booking.com」や「Expedia」のようなホテル検索サイトで予約する場合は問題ないが、「TripAdvisor」や「VRBO」のようなバケーションレンタル専門のサイトや、「Airbnb」のような個人のオーナーが多いサイトでは、空室状況が正確でなかったり、予約の問い合わせになかなか返事をもらえなかったりすることもある。また、貸し手の都合によるキャンセルが認められているサイトでは、過去に貸し手がキャンセルしたことがないかどうか履歴をチェックしたほうがよい。

 個人で又貸しをしている場合、オーナーが旅行者に会いたがらない場合もある。筆者の経験では、鍵の置き場所のことでトラブルになったり、「守衛室に鍵を取りに行ってほしい。ただし、友達だということにして、お金を支払っていることは内緒にしてほしい」などと言われたりして、嫌な思いをしたこともあった。個人が運営する物件の方が割安で選択肢も多いが、こうしたリスクを避けたい方は、ホテル検索サイトの利用をお勧めする。

5. 口コミをチェックしよう
 バケーションレンタルは広くて安いので、たいてい評判がよいが、念のため口コミをチェックしておきたい。とくに、「清潔さ」「水回り」「騒音」は要注意だ。歓楽街が近く、夜遅くまで騒がしいところもあるし、古い建物でお湯の出が悪いところもある。

◆バケーションレンタルは「LCCのビジネスクラス」
 ホテルとバケーションレンタルとの関係は、レガシー・キャリアとLCCとの関係に似ている。ホテルでは24時間フロントが基本で、さらにはルームサービスやコンシェルジュ、セクレタリーサービスなど、至れり尽くせりのサービスを期待できる。ホテルの部屋が狭くても高いのは、こうしたサービスに対する対価なのだ。

 しかし、部屋までコーヒーを持ってきてもらわなくても自分で淹れればいいし、レストランやコンサートのチケットも自分で予約でき、手厚いサービスも必要ないという人もいるだろう。そういう人なら、貸し手の条件を理解した上で、最低限のサービスと割り切れば、費用を大幅に節約しつつ、自宅にいるかのような、快適な滞在を楽しむことができる。そういう意味では、LCCよりもずっといい。「LCCのビジネスクラス」と言っても過言ではないだろう。

Text by 平湊音