なぜ「AI広告」は炎上するのか? 海外でも次々と
人工知能(AI)を使った一部の広告動画が、人々の感情を逆なでしている。日本マクドナルドが8月、ソーシャルメディアで公開したAI製のプロモーション動画に対し、世間の批判が集中した。
フライドポテトのM・Lサイズ250円のキャンペーンにあたり、告知動画にAI生成の少女を起用した動画だった。夜の繁華街や桜の木の下などでポテトを持った少女が微笑む内容だが、実写でもアニメでもない独特のタッチに、「気味が悪い」などの否定的な反応が多く寄せられた。
このような問題は、日本にとどまらない。AIを導入した広告が、海外でも次々に炎上している。AI広告は、なぜ嫌悪の対象となるのか。「アーティスト軽視」とする意見から、いわゆる「不気味の谷」現象まで、炎上の理由は多岐にわたる。
◆炎上したグーグルのAI広告
2024年の夏季オリンピックは、アメリカではスポーツの祭典としてだけでなく、AI広告のオンパレードとしても注目を集めた。グーグル、マイクロソフト、メタなどの大手テクノロジー企業が、AIが日常生活をサポートし、人間の能力を拡張するというメッセージを放った。
しかし、このうちグーグルの広告が炎上した。グーグルの「ディア・シドニー」オリンピック広告は、2024年の夏季オリンピック期間中に放送された60秒の広告だ。アスリートに憧れる幼い娘のため、ファンレターを書くのを父親が手伝うという内容だった。だが、父親が娘に寄り添って手紙の内容を考えるのではなく、グーグルのAIツール「Gemini」に手紙を書かせるという展開であった。
この広告は多くの視聴者から批判を浴びた。広告専門メディアの米アド・ウィーク(8月9日)は、炎上の原因について、ファンレターの執筆という人間の努力が求められる場面を自動化してしまったことにある、とみる。人間性軽視のメッセージを放ってしまった、とも言えよう。
米ヴォックス(8月7日)も、視聴者の反応は非常に否定的だったと振り返る。ワシントン・ポスト紙のコラムニストは、このCMを「見るたびにテレビにハンマーを投げつけたくなる」と書いている。