冷蔵庫へのサイバー攻撃、欧州スーパーで相次ぐ 何が起きているのか
スウェーデンのスーパー「ICA Kvantum」で、廃棄のためカートに積まれた冷凍食品(11月2日)
Johan Nilsson / TT News Agency via AP
欧州各地のスーパーマーケットで、冷蔵庫や冷凍庫がサイバー攻撃によって乗っ取られ、設定温度を勝手に引き上げられる被害が相次いでいる。一連の攻撃で大量の食品が傷み、損害額は合計で数百万ドル(数百万ユーロ)に上っている。
スウェーデンのあるスーパーでは、冷蔵庫と冷凍庫の設定温度が50度に変更されたという。
11月2日には、スウェーデン、ベルギー、ルクセンブルク、アイルランド、イタリア、エストニアなど、少なくとも6か国で問題が報告された。数週間前にも、フランス、ベルギー、オランダのスーパーや個人商店など数百店舗で同様の被害が発生していた。
被害は大手チェーンだけにとどまらない。
ギリシャの首都アテネ郊外で精肉店を営むジョージ・ブーバス氏は3日、同国のテレビ局SKAIに対し、店の冷蔵設備がハッキングされ、設定温度を150度に引き上げられたと語った。
午前4時に出勤した従業員が異常に気づき、技術者が制御を取り戻すまでに2時間かかった。幸い、肉製品への影響はなかったという。150度というのは設定温度であり、実際の庫内温度がそこまで上昇したことを意味するわけではない。
ブーバス氏によると、近隣のスーパーやファストフード店でも同様の問題が起きていた。店では外部からの侵入を防ぐため、冷蔵設備のWi-Fi接続を切断したという。
◆なぜ冷蔵庫がハッキングされたのか
スーパーが冷蔵設備をインターネットに接続するのは、温度を24時間監視し、食品の傷みを防ぐとともに、電力消費を抑え、故障時には遠隔操作で対応できるようにするためだ。
しかし、こうした利便性がサイバー攻撃の侵入口にもなっている。
フランスのサイバーセキュリティー当局の調査では、先に発生した攻撃について、デンマークのダンフォスやアメリカのコープランドが製造した古い遠隔制御装置の問題が指摘されている。被害を受けた機器には、ソフトウエアの更新が終了した製品も含まれていた。
イギリス国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)のリチャード・ホーン所長によると、フランスで被害に遭った冷蔵設備は、初期設定のパスワードを変更しないまま、インターネットに直接接続されていたという。
スイスのザンクト・ガレン大学でサイバーセキュリティーを研究するカテリナ・ミトロコツァ教授は、今回の攻撃を「警鐘」と表現する。
「私たちは家庭や店舗に、実態は小型コンピューターである機器を大量に導入してきた。それなのに、いまだに普通の家電製品と同じように扱っている」
同教授は、冷蔵庫がセキュリティー上のリスクに見えないからこそ、攻撃者に狙われるのだと指摘した。
なお、今回の攻撃に人工知能(AI)が使われたという証拠はなく、専門家らは以前から知られている脆弱性を悪用したものとみている。
攻撃を実行した人物や組織、その動機は依然として不明だ。
フランスの国家情報システムセキュリティ庁(ANSSI)は10月中旬から冷蔵設備への不正侵入を調査しており、被害を受ける可能性のある業界と連携して対策を進めている。
欧州連合(EU)の欧州委員会も対応を協議している。トマ・レニエ報道官は、一連の事件は「孤立した事例ではない」と述べ、欧州全体でサイバー攻撃に備える必要性を強調した。
(AP通信の記事を抄訳)
By KELVIN CHAN, EMMA BURROWS and MENELAOS HADJICOSTIS Associated Press





