世界のAI情勢を変えるディープシーク 米AI制限の市場で急拡大
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最近発表されたマイクロソフトの報告書で、中国発の大規模言語モデル、ディープシーク(DeepSeek)が途上国を含む、欧米の主要サービスが浸透しにくい市場で急速に存在感を高めていることが分かった。オープンソースで価格競争力に優れており、チャットGPT(ChatGPT)などアメリカ企業の主要モデルへのアクセスが制限される国々や、決済・利用条件の壁がある市場にとって、安価な代替手段となっている。
◆使用者はすでに6人に1人 拡大する生成AI利用
1月8日に発表されたマイクロソフトの研究者による報告書によれば、生成AIツールの世界的な普及率は2025年の後半には世界人口の16.3%に達し、同年前半の15.1%から上昇した。今や約6人に1人が、学習、仕事、問題解決などにAIを使っていることになる。
グローバルノース(主に高所得国)では就労年齢人口の24.7%がAIを使用している。一方、グローバルサウスでは14.1%にとどまる。
マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、この格差は懸念材料だと指摘する。対処しなければ、先進国と途上国の間の大きな経済格差が永続化し、拡大する可能性があると述べている。(英フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)
◆補助金で競争力アップ 台頭する中国製
先進国やデジタル投資を早めに進めた国々ほどAI利用が進んでいる一方で、無料または低価格でオープンなプラットフォームが新しいユーザーを生みつつある。その代表が、中国のスタートアップ企業ディープシークが開発した高性能AIツール「ディープシーク」だ。無料かつオープンソース・モデル(主要コンポーネントに誰でもアクセス可能で修正も可能)であることから、途上国全体でのAI普及を促進していることが、マイクロソフトの研究チームにより明らかになった。
スミス氏は、中国政府の補助金がディープシークの価格競争力を支えていると指摘する。対照的に、オープンAIやグーグルなどのアメリカのテック企業は最先端技術を自社で管理し、顧客のサブスクリプションや企業契約を通じて利益を得ている。アフリカなどの貧しい途上国は、オープンソース以外の非常に高価なソリューションを購入できないため、中国製AIは安価な代替手段になっているという。
さらに、アメリカの主要モデルへのアクセスが制限されているロシア、イラン、キューバ、ベラルーシなどでも採用されており、アメリカ企業のサービスが行き届いていない市場で大きな牽引(けんいん)力を獲得した。報告書は、こうした動きが世界のAI情勢を再構築したと述べている。
◆新たな地政学的手段に? 世界の未来にも影響
チャットGPTの開発元であるオープンAIは、モデル能力においては引き続きアメリカが主導権を持っているとしながらも、世界の人工知能産業を支配するためのアメリカと中国の競争は「複雑化しており、予測困難な状況」になっているとしている(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙)。
マイクロソフトの報告書は、現在の状況を不安視する。欧米プラットフォームが容易に展開できない領域でオープンソースAIが地政学的手段として機能し、中国の影響が拡大し得ることを浮き彫りにしたと述べている。
マイクロソフトのスミス社長は、若く急成長する人口を抱えるアフリカなどの地域におけるAI普及への関心の欠如が、民主主義的価値観に合致しないシステムの台頭を招きかねないと警告する。アメリカのテック企業や欧米諸国政府が、そういった国の未来に目を背けるならば、より広範な世界の未来にも目を背けることになり、それは重大な過ちだと指摘している。(FT)




