遠隔操作で家事を学ぶ 300万円の家庭用AIロボ「ネオ」予約開始
Courtesy of 1X
アメリカを拠点とするAIロボティクス企業が、世界初の家庭用ヒューマノイド「ネオ」の予約受け付けを開始した。ユーザーと自然なつながりを持ちながら家事をこなし、パーソナルアシスタントとしても機能するという。まだ開発の初期段階で完璧ではないが、SF映画で見た世界がまた一歩現実に近づいている。
◆細かな作業から力仕事まで 家事全般を代行
家事代行機能を持つヒューマノイド「ネオ」は、アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くAIロボティクス企業1Xが開発した。身長約168センチ、体重約30キロのスマートな体形。3Dラティス・ポリマー構造で作られたソフトボディは、柔らかなニットスーツで覆われている。
1X独自の駆動システムにより滑らかな動作を実現しており、安全性が高く、人を傷つけることなく安全に作業をこなすという。22自由度の手を備え、家庭内の細かなタスクに対応できる。約70キロまでのものを持ち上げることができ、約25キロまでなら運搬も可能。騒音レベルも22デシベル(dB)と、冷蔵庫より静かだ。
ユーザーからの指示はボタン操作や音声コマンドで可能だが、「ネオ」には大規模言語モデル(LLM)が内蔵されており、会話を通じて即座にパーソナライズされたアシストが提供される。また、ビジュアルインテリジェンスにより視覚情報を活用して対話したり、メモリー機能で過去の文脈を記憶して継続性のある会話を行ったりと、ユーザーとの自然な関わりを持ちながら支援と実用性を提供するよう設計されている。
◆期待しすぎは禁物 学習なくして改善なし
有能な家庭用ロボットの登場に期待が高まるが、問題点もある。「ネオ」には出荷時にドアの開閉、物品の取り出し、照明のオン・オフなどの基本的なタスクを自律的に行う機能が搭載されているものの、初期ユーザーがより具体的で複雑なタスクを要求する場合は人間の遠隔操作者が必要になる。
創設者で最高経営責任者(CEO)のベルント・ボーニッチ氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)に対し、購入者は全員、人間のオペレーターがロボットのカメラを通じて自宅内部の映像にアクセスすることに同意しなければならないと述べている。最終的にロボットが自律的にタスクを遂行するようになるには、学習させ、訓練データを収集することが必要で、ユーザーのデータがなければ製品の改善はできないという説明だ。ただし、ユーザーのプライバシーは守られると約束している。
初期段階では遠隔操作者が設定する作業が大部分を占めるが、「ネオ」は現実世界で訓練されたAIモデルを活用して、「家庭」という最も多様な環境に徐々に適応していくことになる。最終的に自律的に動作し、新たなスキルを習得・開発することになる。(1Xニュースリリース/ビジネスワイヤ)
ボーニッチ氏はWSJに、「2026年にはネオが家庭内の大半の作業を自律的にこなす」との見通しを示し、当初の品質については「ロボティクス・スロップ(完璧ではないが実用性は高い状態)」と表現したうえで、データ蓄積により「大幅に改善する」と述べた。
◆ポテンシャルは大 現在予約受け付け中
実際に「ネオ」と時間をともにしたWSJの記者は、現時点では「ネオ」は人間の家政婦には敵わないものの、家庭におけるフィジカルAI(ロボットや自動運転などの自律型マシン)の夜明けを垣間見せる存在だと指摘。今後数年は、有能なロボットを所有することではなく、ロボットを育て、学ばせることに焦点が移るだろうと述べている。
「ネオ」の価格は1体2万ドル(約308万円)で、現在予約受け付け中。月額499ドル(約7万7000円)のサブスクリプションモデルも提供予定だという。初回生産分は2026年に出荷予定で、まずは主にアメリカ向けとなる。2027年より他の市場へ拡大を目指しているとしており、日本上陸の可能性もありそうだ。




