核兵器? 小惑星の地球衝突、どうやって回避するのか? 取りうる選択肢

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 欧州宇宙機関(ESA)が監視する小惑星「2024 YR4」が2032年12月、地球の軌道と交差する可能性が浮上している。イギリスの天文学者は、「衝突確率は無視できないレベルだ」と警告する。

◆5月には追跡不可能に
 英ヤフーニュース(13日)によると、この小惑星は40~100メートルの幅があり、ロンドンのビッグベン(高さ96メートル)に匹敵する大きさだという。

 現在、この小惑星は地球から約4300万キロメートルの距離にある。徐々に遠ざかっており、5月には観測網による追跡が一時的に不可能となる。木星方向へ向かった後、2032年12月に再び接近する見込みだ。ESAの推計では、この小惑星が仮に地球に衝突すれば、核爆発に匹敵する被害をもたらす可能性があるという。

 天文学者のデービッド・ホワイトハウス氏は、英民放スカイニュース(6日)に対し、衝突確率は67分の1であると説明したうえで、この確率は「無視できないレベルだ」と警告する。イギリス宝くじの当せん確率(1400万分の1)と比較しても非常に高い、とホワイトハウス氏は添えた。

◆考えられる手段は5つ
 スカイニュースによると、欧州宇宙機関がウィーンで開催する会議において、小惑星への対応策が協議される。ホワイトハウス氏は同局の取材に対し、「2028年に小惑星の軌道を変更する必要があり、最終手段として核兵器の使用も検討される」と述べている。

 英タイムズ紙は、一般的な小惑星の衝突対策として5つの方法を挙げる。1つは、探査機を衝突させ、軌道を変更する方法だ。このほか、核兵器による迎撃、探査機の重力を利用して小惑星を牽引する方法、金属の棒によって破砕する方法、そして表面を白く塗装して太陽光を反射させ光の圧力で長期的に軌道を変える方法がある。

 同紙はこのうち、最初に挙げた探査機による衝突が最も現実的な選択肢だと指摘している。アメリカ航空宇宙局(NASA)が2022年に実施した小惑星衝突実験「DART」で、この手法の有効性が実証されているためだ。

◆ファルコン9で探査機打ち上げの案
 英ヤフーニュースも、探査機による衝突が最も有力だと報じている。ホワイトハウス氏は同メディアに、「初期的な検討の結果としては、NASAが2022年に成功させた小惑星衝突実験『DART』と同様の手法が有効とみられる」と説明している。2機の探査機による衝突が望ましく、米スペースX社のファルコン9ロケットでの打ち上げが可能だという。DARTの設計を基に、やや大型化した探査機を比較的短期間で製作できると氏は言う。

 今後、小惑星への安全な対処は可能なのか。タイムズ紙によると、欧州宇宙機関の探査機「ヘラ」が2026年10月、小惑星ディモルフォスの軌道に到達する予定だ。DARTによる衝突実験の結果を詳しく分析し、今後の小惑星対策に活用することが期待される。これにより、数十年以内に小惑星衝突の危険性を大幅に低減できる可能性がある。

 7年後の危機を避けるため、専門機関による検討が進んでいる。

Text by 青葉やまと