テレグラム創業者逮捕の影響とは 旧ソ連圏で人気のメッセージアプリ
メッセージアプリ、テレグラムの創業者であるパベル・ドゥロフ(Pavel Dourov)がパリ近郊の空港で逮捕された。当局は、アプリ上の有害なコンテンツの投稿監視を怠ったとして逮捕に至った。各メディアの反応は?
◆投稿監視をせず、犯罪を放置した罪で逮捕
8月24日、ドゥロフはプライベートジェットでアゼルバイジャンからパリ郊外のル・ブルジェ空港に到着した際に、フランス警察に逮捕された。テレグラムが適切な投稿監視を行わずに、麻薬取引、性犯罪、詐欺などの犯罪を放置した疑いがあるということで、フランス警察内の「未成年者対象犯罪取り締まり事務局」(OFMIN)が、逮捕令状を発行した。
現在39歳のドゥロフはロシア生まれの起業家で、ロシアで最も人気のあるSNSアプリの一つとなったフコンタクテ(Vkontakte)を2007年に立ち上げ、マーク・ザッカーバーグとも比較される人物である。2014年、プーチン政権関係者の介入が原因となり、ドゥロフはフコンタクテの株式を売却し、ロシアを逃れて兄とともにテレグラムを立ち上げた。現在はドバイに拠点を置く。2021年にはマクロン大統領にフランス国籍を与えられた。
ラジオ局フランスアンフォは、テレグラムが政治的なプロジェクトとしての要素を持っているとの専門家の見解を伝える。ドゥロフはリバタリアンで、国家の仕組みに問題意識を持ち、税制を疑うというような思考を持つ。今回の逮捕につながったテレグラムの方針に関しても、政府の依頼協力に応じず、投稿監視に関しては消極的という姿勢である。
◆逮捕の影響とは
テレグラムのユーザー数は900万人以上と報じられている。米メタのワッツアップと比較するとその数は半分以下だが、特に旧ソ連圏で人気を集めている。2022年のロシアのウクライナ侵攻後は、ロシアとウクライナ双方のユーザーに多用され、フィルターされていない画像や映像が両サイドから伝えられたとアルジャジーラは報じる。ウクライナのゼレンスキー大統領もユーザーの1人である。
今回の逮捕を受け、ロシアの政治グループからはドゥロフへの支持が集まるとともに、ロシア政府側からもフランス政府の二重基準を批判するような声が上がった。また、アメリカの保守派からも批判の声が上がった。たとえば、イーロン・マスクは、#FreePavelのハッシュタグとともに、ドゥロフとタッカー・カールソンのインタビュー動画をX(旧ツイッター)に投稿。その後、「リベルテ、リベルテ!リベルテ?(Liberté Liberté! Liberté?)」とフランスの標語である自由、平等、友愛(Liberté, Égalité, Fraternité)を皮肉ったような発言を投稿した。また、国家機密を暴露して指名手配され、ロシアに亡命したエドワード・スノーデンも「ドゥロフの逮捕は言論と結社に関する基本的人権の侵害である」とXに投稿した。
SNSの投稿の自由と投稿監視の責任はテレグラムに限らず、すべてのSNSに関連する課題である。フランス当局の強硬手段が今後どのような影響を及ぼすのかに、注目が集まる。