「SNSに警告表示を」米医務総監が提言、その深刻な背景とは

ビベック・マーシー医務総監|Susan Walsh / AP Photo

 アメリカのビベック・マーシー(Vivek H. Murthy)医務総監は17日、ニューヨーク・タイムズに寄稿し、SNSに警告レベルの表示を義務付けるべきだという内容の提言を発表した。

◆SNSに対しての警告ラベル義務化を提言
 アメリカ保健福祉省(Department of Health and Human Services)のホームページに記載された説明によると、同省の幹部である医務総監(Surgeon General)には、「国の医師として、外科長官はアメリカ国民に、健康を増進し、病気や怪我のリスクを減らす方法について、入手可能な最高の科学的情報を提供する」という役割がある。

 2021年3月から現職に就くマーシーは、17日付のオピニオン記事『医務総監:ソーシャル・メディア・プラットフォームに警告表示を求める理由(Surgeon General: Why I’m Calling for a Warning Label on Social Media Platforms)』の冒頭で、「医学部で学んだ最も重要な教訓の一つは、緊急時には完璧な情報を待つ余裕はないということだ」と述べ、ソーシャルメディアが大きな影響を及ぼしていると考えられる、若者が抱えるメンタルヘルス危機は、緊急事態であり、迅速に対応すべきであるとの意見を表明。

 記事によると、ソーシャルメディアに1日3時間以上費やすティーンは、不安やうつ症状のリスクが2倍になるというデータがある。2023年夏の時点で、この年齢層の1日の平均使用時間は4.8時間だった。また、半数以上のティーンが、ソーシャルメディアによって、自分の体型が嫌になると回答しているとのことだ。

 このような状況を踏まえ、ソーシャルメディアがティーンのメンタルヘルスへの深刻なダメージと関連していることを明記した、医務総監からの警告ラベルをSNSプラットフォームに対して義務付けるべきであるとマーシーは提言する。同様の例として、タバコのパッケージに印刷された警告ラベルには一定の効果があると主張する。子供たちのSNS利用について何とかしたいがどうしたら良いか分からず困っているという親たちの悩みは深刻で、国による何らかの対策が求められているという。

◆警告ラベルだけでは不十分
 マーシー医務総監がティーンのSNS使用とメンタルヘルスの関連性について指摘したのは、今回が初めてではない。ソーシャルメディアのリスクと、若者のメンタルヘルスの問題は、医務総監が取り組む8つの優先課題の2つだ。昨年、『ソーシャルメディアと若者のメンタルヘルス』と題した約20ページの提言書を公開。ソーシャルメディアには便益と害の両側面があるとしたうえで、政策立案者、テック企業、保護者、子供、研究者のそれぞれのステークホルダーに対して、対応可能なアクションを取ることを呼びかけた。

 一方で、警告ラベルだけでは不十分であり、SNSとタバコは同じようには扱えないという指摘もある。マーシー自身も認識しているように、警告ラベルの義務化が実現するには議会が法案を可決する必要があるとともに、警告だけにとどまらず、使用の制限や禁止に関する法案成立も求められる。さらに、SNS依存やメンタルヘルスの悩みを抱えるのはティーンだけではない。行政やテック企業の迅速なアクションに期待するとともに、市民全体がソーシャルメディアに特化したメディアリテラシーを高める必要がありそうだ。

Text by MAKI NAKATA