米著名投資家の「テクノロジー楽観宣言」、なぜ批判を呼んだのか
アメリカの著名な投資家マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)が、「テクノ・オプティミスト宣言(The Techno-Optimist Manifesto)」を公開。テック至上主義的な強気な姿勢が批判を呼んでいる。
◆「虚偽」から始まる「テクノ・オプティミスト宣言」
ウェブブラウザのネットスケープなどを開発し、現在は世界的に有名なベンチャー・キャピタル企業であるアンドリーセン・ホロウィッツ(通称:a16z)の共同創業者として、シリコンバレーのテック業界において大きな影響力を持つアンドリーセンが10月、a16zのウェブサイトで「テクノ・オプティミスト宣言」と題された文章を公開した。14の短い項目からなる宣言は、虚偽(lies)の見出しとともに、「私たちはだまされている」というセンセーショナルな一文で始まる。
アンドリーセンは、私たちはテクノロジーが未来の脅威であり、すべてが破壊されるという悲観的な考えにだまされているが、真実は異なり、「テクノロジーこそが人類の野望と達成の栄光であり、進歩の最先端にある推進力であり、私たちの可能性を実現するものである」と主張する。テクノロジーの可能性を信じて疑わない、この考えこそがテクノ・オプティミストの思想だ。また、テクノ・オプティミストは、経済成長こそが進歩だと考える。成長がなければ、滅びる。人口増には期待できず、天然資源にも限りがあるなか、テクノロジーが唯一の永続的な成長源であるとアンドリーセンはいう。さらに、テクノロジーと市場が合体することで、永続的な創造、成長、豊かさのエンジンとなる「テクノ・キャピタル・マシン」が作られるのだという。
アンドリーセンの楽観的な主張は、AI(人工知能)やエネルギーの分野にも及ぶ。彼によれば、AIは人の命を救う可能性を持つ一方で、AI開発を減速させれば、助かるはずだった人々が犠牲になるという。エネルギー問題に関しては、核融合エネルギーが解決するというのが彼の主張だ。さらに、知能とエネルギーが豊富に手に入ることによって、すべての価格が大幅に下落し、地球上すべての人が豊富な物資を手にいれ、人々の生活の質が向上するという。そのことで、地球の人口は優に500億人にまで拡大することが可能で、ほかの惑星を植民地化することも視野に入れれば、もっと増えることができると豪語する。物資が豊富に手に入ることにより、人々が宗教や政治に関与する余裕ができ、社会的かつ個人的にどのように暮らすかという選択肢を手に入れるのだという。
極めて楽観的でユートピア的な構想だが、「悪い考え」がユートピア的な世界の実現を阻む「敵」だという。悪い考えとは、たとえば停滞だ。テクノ・オプティミストにとっては、サステナビリティや社会的責任、ESG、持続可能な開発目標(SDGs)すらも敵だという。
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