AIとVRにフォーカスするメタ ザッカーバーグ氏、開発者会議で強調
米メタは9月27日、開発者会議「コネクト」を開催した。同社のマーク・ザッカーバーグ創業者兼CEO(最高経営責任者)は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、人工知能(AI)にフォーカスすることを強調した。
2年前に社名をフェイスブックからメタに変更した同社はVRヘッドセットの最新版「クエスト3」を発表。10月10日発売で、価格は128GBモデルが499ドル(日本では7万4800円)だ。
カリフォルニア州メンローパークにある本社の中庭に設けられた演台に立ったザッカーバーグ氏は開発者、従業員、ジャーナリストらに向けて、「対人的なつながりの未来の構築に向けて注力している」と表明した。その上でユーザーが友人や同僚のホログラム、または彼らを助けるために作られたAIボットとやり取りする近未来の姿を描き、「近い将来、メタバースと呼ばれる仮想空間の中で形あるものとデジタルが一体になる」と語った。
続いて同社のメッセージングアプリを使ってやり取りができるAIパーソナルアシスタントが紹介された。夕食のメニューを考えてくれる「スーシェフ(副料理長)のマックス」や「お抱え編集者兼執筆パートナーのリリー」など「面白おかしい」AIキャラクターを何人か披露しつつ、「トレーニングを終えたキャラクターはまだ少ないが、これから続々と登場してくる」と述べた。
さらに、動画や写真の撮影、ライブ配信、音楽視聴、メタAIアシスタントとの対話ができるスマートグラス「レイバンストーリーズ」の最新版も発表された。
ザッカーバーグ氏は「AIアシスタントにユーザーが目にしているものを見せ、耳にしているものを聞かせるのに、スマートグラスは理想的なフォームファクターだ」と語った。10月17日に発売され、価格は299ドルだ。
メタでは企業変革のプロセスが進行しており、完了するまでに数年かかるとしている。同社はソーシャルプラットフォームのプロバイダーから脱し、黎明期のVR世界を支配する強力な存在になることを目指している。メタバースと呼ばれるこの世界は、インターネットに生命が吹き込まれたような、3Dでレンダリングされた世界だといえる。
だが変革に数十億ドルのコストをかけても予想以上の進展がみられず、同社の主要事業は依然としてSNSプラットフォーム(フェイスブックとインスタグラム)の広告である。インサイダーインテリジェンスのアナリスト、ヨーラム・ウルムサー氏が見るところ、ティックトックとの競争が今なお同社最大の脅威であり、「AI駆動のパーソナライゼーションなど、チャットボットやストーリーその他エンゲージメントを維持する手段に関わる取り組みの多くが、メタにとって全社的な課題だ」と話している。
オンライン広告の不振とグローバル経済の不確実性に直面しているメタは昨年11月以来、2万人超の人員を削減してきた。ザッカーバーグ氏は今年を「効率化イヤー」と位置づけ、人員を削減しつつも会社の長期ビジョンにフォーカスするためにAI専門家をはじめとする技術要員の採用に努めるとしている。
ビジョンの中核にあるのがAIだ。メタは7月に生成AIの基盤となる大規模言語モデルの次世代版「ラマ2」をリリースし、この技術を研究・商用向けに無料公開した。9月27日には、ユーザーのプロンプトから画像を作成するAI画像生成モデル「エミュ」も披露した。
同業のグーグルやマイクロソフトがそうであるように、メタもここ数年来、AI技術の発展に注力するコンピューターサイエンティストが主要メンバーの大がかりな研究チームを抱えている。だが、ChatGPT(チャットGPT)がリリースされたことで目新しい散文や画像、メディアを作成できる「生成AI」ツールでマネタイズする動きが加速していることもあり、メタの存在感がかすみつつあった。
ザッカーバーグ氏は当時、誰でも最新のAIモデルを直接ダウンロードできるほか、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「アジュール」の利用で提携したこともあり「マイクロソフトが提供する安全性とコンテンツツールと同時に利用することもできる」と発言していた。
By BARBARA ORTUTAY AP Technology Writer
Translated by Conyac