メタの新SNS「スレッズ」に殺到した人々はサービスを使い続けるのか?
フォロワーとつながりたい有名人や政治家、有名企業、日常的なSNS利用者が、メタの最新短文投稿アプリ「スレッズ(Threads)」に流れている。なかにはイーロン・マスク氏がツイッターに厳しい管理を施した一連の騒動に嫌気が差した利用者もいる。
だが、真の問題は別のところにある。彼らはスレッズにとどまり続けるだろうか?
インスタグラムCEO(最高経営責任者)のアダム・モセリ氏は7月10日、インスタと連携したアプリとして新たに開始したスレッズに「公開から5日で1億人が登録した」と投稿した。
ボルチモアに住むアン・コールマン氏(50)もその一人で、SNSでフォローしているコメディアンの投稿でスレッズのことを知り登録したという。ツイッターの利用歴は10年以上で、進歩的な政治思想を持ち、伴侶もそこで見つけたほどの愛好家だが、最新のSNSプラットフォームに乗り換えようとしている。マスク氏の政治的な見解のほか、認証システムの刷新など同氏がツイッターに施した変更が理由だという。以前は分散型SNSと呼ばれるマストドン(Mastodon)にも参加していたが、やや使いづらく感じていた。
コールマン氏はスレッズは気に入ったというが、ツイッターで友達だった人たちを簡単にフォローできればありがたいと思っている。スレッズではインスタ利用者が同アプリでフォローしているアカウントを自動的にフォローするオプションが提供されているため、インスタのアクティブな利用者なら難なくスレッズで同様のエンゲージメントを構築できる。だがインスタを使っていない場合は事前の設定が多くなる。
同氏は「もし完全にツイッターをやめるなら、何人かの友だちを(ツイッターから)探し出さなければならない」と話す。ケンブリッジ・アナリティカによるフェイスブックの個人情報流出事件の影響もあり、メタについては一抹の不安はあるとしながらも「マスク氏に抱いている懸念ほど深刻ではない」とも述べている。
メーカー勤務のマイケル・エヴァンコー氏(28)もツイッターを利用していたが、数年前に個人ページがスパム規制違反で停止されてからはそれほど使わなくなったという。同氏はマスク氏がツイッターに加えた変更に反対しておらず、今年初めには新しいアカウントも作ったが、フォロワーも交流の数もそれほど増えなかった。スレッズに参加したところ、ほかの利用者との交流が深まったというが、メタがスレッズを過度に管理することのないよう願っている。そうなれば「関心と交流の双方を抑制する方向に働くだろう」と話す。
メタでは、インスタのコンテンツガイドラインに基づいてスレッズを運営する方針を示している。同社は、一躍有名になったスレッズを、毒性の弱いツイッターといったような、新たなデジタル広場と位置づけており、幹部のなかには、スレッズの目的はツイッターに取って代わることではなく、多くの利用者に対して受け入れられやすいサービスを提供することだと話す人もいる。
モセリ氏は「ツイッターを受け入れられなかったインスタのコミュニティや、怒りの感情の少ない会話をする場に関心のあったツイッター(やそれ以外のプラットフォーム)のコミュニティのために、誰もが使える広場のようなところを作るのが目的だ」と語る。
ウェブ解析企業シミラーウェブによると、スレッズが広く利用されるようになった最初の2日間(7月6日、7日)、ツイッターのトラフィックは前週同期比で5%、前年同期比で11%減少した。ところがたとえスレッズが現れていなくてもツイッターはトラフィック減少に見舞われていたという。
ニューヨークにあるナザレ大学でメディア研究を専門とするジェニファー・ビリンソン教授によると、スレッズ立ち上げの最初の数日は、ツイッター難民とインスタでのワンクリックで流れてきただけのその他大勢という潜在的に異なる文化がぶつかり合うものだった。
スレッズがツイッターのクローンになるという考えは、ツイッターの利用者が、月間20億人以上の利用者を持つインスタグラムの利用者に「圧倒的に劣る」という現実に真っ向からぶつかるものだと同教授は指摘する。ツイッターの1日の利用者数は、昨年の同社の決算報告書の最新の数字によると、2億3700万人を超えている。
また、ツイッターの険悪なムードに慣れていた利用者が穏健なインスタ利用者を困惑させてしまう可能性もある。もっとも、スレッズのフィードに表示されるコンテンツを何らかの形で制御できるようプラットフォームが変更されれば、こうした緊張は緩和されるかもしれない。現時点では、スレッズのアルゴリズムに利用者が翻弄されているといえる。
クリエイティブ・エージェンシーのメカニズム社のパートナー兼CSO(最高社会責任者)のブレンダン・ガハン氏は、スレッズが成功するか否かについて語るのは時期尚早だと指摘する。ほかのプラットフォームは集中的なアプローチを採用してサービスを開始し、徐々に拡大していく戦略で成功したことを引き合いに出しつつ、スレッズがこれほど急成長したのは望ましいのかと疑問を呈している。
メタは最新アプリをインスタに統合することでコンテンツクリエイターのインスタフォロワーをいとも簡単にスレッズフォロワーに転換した。ミスタービーストとして活動している人気ユーチューバーのジミー・ドナルドソン氏は、スレッズですでに400万以上のフォロワーを獲得している。だが人気のあるコンテンツクリエイターが影響力を増す一方で、有望な人が最新のプラットフォームで独自の文化を育む動きを妨げてしまう可能性もあるとガハン氏は指摘する。
インフルエンサーがスレッズをどのように利用するか、ほかのプラットフォームと同じようにフォロワーを獲得できるかという問題もある。クリエイターも別の課題に直面するかもしれない。
ガハン氏は「純粋に動画や写真をベースに投稿していた人が文字中心のプラットフォームに移行するのは難しいのではないか。とはいえ、多くの人は同じコンテンツを二重投稿しているようだ。それで成功するかどうかは時間が経てばわかるだろう」と話している。
ポップカルチャーに関する話題をSNSに投稿することで生計を立てているコンテンツクリエイターのアサンテ・マドリガル氏(22)もスレッズアプリの利用を始め、最近作った女優キキ・パーマーに関連する動画などを双方のアプリに投稿しているという。
だが、少なくとも現時点ではスレッズにコンテンツを投稿してマネタイズ(収益化)するのは困難であるため、このアプリを優先して使うつもりはないとしている。合計で200万のフォロワーを抱える同氏はインスタやユーチューブ、ティックトックなど、現に稼ぎのあるアプリに集中するつもりだという。
マドリガル氏によるとスレッズのアルゴリズムはブラックボックスになっているほか、アプリにはハッシュタグや利用者間のダイレクトメッセージなどの機能が十分備わっていないと指摘する。スレッズで何をするかを考えるのは大変であるとした上で「ツイッターと同じようにポップカルチャー関連の投稿をしている友達もたくさんいるけど、もうこれ以上アプリはいらないという感じだ」と話している。
By HALELUYA HADERO Associated Press
Translated by Conyac