ユーチューブ、9歳児に暴力的で生々しい銃動画を“おすすめ” 調査で判明

Thais Ceneviva / Shutterstock.com

 ユーチューブ動画と銃による暴力の関係性を調査するため、ソーシャルメディアについての研究を行う非営利団体の研究者は、アメリカ在住の一般的な少年の行動パターンを模倣したアカウントを同プラットフォームに作成した。

 アカウントは2つ作成され、両方ともビデオゲームが好きな9歳児を想定するものだ。アカウントのうちの1つはユーチューブにおすすめされる動画をクリックし、他方はこのような提案を無視するとした。この点以外の特徴は一致している。

 ユーチューブからのおすすめ動画をクリックするアカウントには、学校での銃乱射事件や戦術的な射撃訓練の様子を生々しく映し出す動画、また銃器を完全自動化するためのハウツー動画が瞬く間にたくさん配信されてきた。拳銃を巧みに扱う学齢期の少女や、本物そっくりの血液や脳が詰まった頭部模型めがけて0.5インチ口径の銃を発砲する射撃手が登場する動画もある。このような動画の多くは、暴力的で生々しいコンテンツに関わるユーチューブ独自のポリシーに違反している。

 ユーチューブが規約を設定し、コンテンツのモニタリングを強化しても、同プラットフォームに蔓延(まんえん)する恐ろしい動画は阻止できていないことが調査結果によって示されている。このような動画は、影響されやすい子供に精神的ショックを与えたり、過激思想や暴力が横行する邪悪な道へ導いたりする恐れがある。

 テック・トランスパレンシー・プロジェクト(Tech Transparency Project)の代表者であるケイティ・ポール氏は「ビデオゲームは子供に人気の高いアクティビティだ。銃販売店に行かなくても『コール・オブ・デューティ(Call of Duty)』などのゲームで遊ぶことはできるが、ユーチューブは子供たちをそのような場所に誘い出している。それはアルゴリズムによるものであり、ビデオゲームや子供によるものではない」と語る。この調査団体が行ったユーチューブについての調査結果が5月16日に発表された。

 ユーチューブがおすすめする動画をフォローするアカウントには、銃器に関連するあらゆる動画が1ヶ月間に382本配信された。これは1日あたり12本に相当する。ユーチューブのおすすめを無視しているアカウントにも、銃に関連する動画が配信されたものの、合計34本にすぎなかった。

 研究者は14歳の少年を想定するアカウントも作成した。これらのアカウントにも、銃や暴力に関連するコンテンツが同程度に配信された。

 アカウントに表示されたおすすめ動画のなかに『拳銃をマシンガン仕様にする方法(How a Switch Works on a Glock)』と題されたものがある。ユーチューブはポリシーに違反しているとしてこの動画を削除したが、2週間後にはタイトルがわずかに変更されたのみでほぼ同じ内容の動画が表示された。この動画は現在も公開されている。

 ユーチューブの広報担当者は、同プラットフォームは子供を守るための取り組みを行っていると弁護し、17歳未満のユーザーはサイトの閲覧に保護者の許可が必要であることや、13歳未満のユーザーアカウントが保護者のアカウント管理下に設定されていることに触れた。「8~19歳のユーザーがより安全に楽しめるよう、当社は若い世代の視聴者に対して多くのオプションを提供している」との声明を発表している。

 ユーチューブはTikTok(ティックトック)と並んで、子供や10代の若者に人気の高い動画共有プラットフォームである。両サイトとも過去に、銃を使った暴力や摂食障害、自傷行為を助長する動画を配信し、場合によっては拡散していると批判を受けたことがある。ソーシャルメディアと過激化、現実世界における暴力の関連性については、ソーシャルメディアの批評家からもこれまでに指摘されている。

 最近多く発生している銃乱射事件の犯人は、暴力を美化するためにソーシャルメディアや動画配信プラットフォームを利用しており、さらには襲撃の様子を生配信することもある。2018年にフロリダ州パークランドの学校で起きた銃乱射事件で17人を殺害した襲撃犯は「人を殺したい」「学校銃撃のプロになるつもりだ」「女の子の胸を撃つことになんら問題を感じない」とユーチューブに投稿していた。

 5月初旬に発生したダラス近郊のショッピングセンターでの銃撃事件では、ネオナチの武装犯人が8人を殺害した。この犯人もまたユーチューブのアカウントを持っており、そこにはライフル銃の組み立て方や連続殺人犯ジェフリー・ダーマーについての動画、テレビ放映された学校での銃撃事件をクリップした動画がアップロードされていた。

 テック・トランスパレンシー・プロジェクトの研究者により特定され、ユーチューブが削除した動画がある一方で、現在も公開され続けているコンテンツもある。大手テック企業の多くは、自社のルールに違反しているコンテンツへの警告表示や削除を自動化システムに委ねているものの、こうしたモニタリング業務に対してより大規模な投資を行う必要があることを今回の調査結果が示しているとポール氏は指摘する。

 先頭に立って銃規制を提唱してきた非営利団体エブリタウン・フォー・ガン・セーフティー(Everytown for Gun Safety)で調査責任者を務めるジャスティン・ワグナー氏は「連邦政府による規制が敷かれていないなか、ソーシャルメディア企業は自社のルールを強化する取り組みを進めなければならない」と話す。同団体もまた、テック・トランスパレンシー・プロジェクトの調査結果によって、銃器関連のコンテンツに対する年齢制限を厳しくする必要があることがわかったと述べた。

 テック・トランスパレンシー・プロジェクトによる報告書に対してワグナー氏は「銃を購入できる年齢に達していない子供たちが、ユーチューブで銃器の組み立て方法や破壊力を高めるための改造方法、残虐行為を犯す方法を調べられるような状況は間違っている」と話す。

 TikTokについても、10代の若者にとって有害なコンテンツがおすすめされている問題が過去に報告されて以来、同様の懸念が引き起こされてきた。

 TikTokは、利用できる年齢を13歳以上に規定しているポリシーをあげて自社を擁護した。同サイトにおいても有害な行為を助長するような動画は違反であると規定されている。さらに、摂食障害などのトピックを含むコンテンツを検索したユーザーには、メンタルヘルス支援に向けた情報を即座に提供するよう定めている。

By DAVID KLEPPER Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP