遠隔操作の武装ロボット、イスラエル企業が発表 危険な国境地帯をパトロール
イスラエルの国営企業、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社は13日、遠隔操作可能な最新の軍事ロボット「Rex MK II」を発表した。この無人車両型ロボットは戦闘地域の巡回や侵入者追跡だけでなく、敵に対して砲撃することも可能。現代の戦場を急速に変革させているドローン技術が生み出した最新鋭マシンといえる。
戦闘無人化の賛成派は、「こうした半自律型マシンを活用することで、軍は兵士を保護することができる」と歓迎する一方、反対派は「人間の判断を介さずロボットが生死を決定する、という危険な一歩を踏み出すことになる」と懸念をみせている。
同社の自律システム部門で副責任者を務めるラニ・アブニ氏によると、同機はタブレットで操作することができ、機関銃2丁およびカメラ、センサーも搭載するという。さらにこのロボットは地上部隊向けに情報収集するほか、戦闘地域内外への負傷兵や物資の運搬、そして近くの目標を攻撃することもできる。
イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社の子会社であるELTAシステムズでは、過去15年間に6台以上の無人機を開発してきたといい、Rex MK IIはその最先端機にあたる。
2007年にイスラム過激派組織ハマスがガザ地区を掌握して以来、イスラエルは国境を封鎖。現在、その国境警備には小型の半自律型軍事ロボット「ジャガー」が配置されている。
ガザ地区にはおよそ200万人のパレスチナ人が住んでいるが、イスラエルおよびエジプトによる軍事封鎖によってそのほとんどが自由な国境通過を許されていない。国境付近ではパレスチナの過激派や自暴自棄になった労働者による抗議活動、イスラエル側への侵入行為も頻繁に行われている。
イスラエル軍は誘導ミサイルを搭載したドローンをはじめ、技術的優位性でハマスを圧倒しており、ジャガーもそうした数多ある軍事ツールのひとつだ。ジャガーをどのように使用しているのか、詳細を軍側に問い合わせてみたが返答はなかった。
無人の地上車両は、アメリカやイギリス、ロシアなど他国の軍隊でも配備が拡大しており、おもに後方支援や地雷除去、武器による攻撃を担っている。
タブレット端末を介して人間の手で車両を操作することもできるが、移動や監視システムなど多くの機能は自律動作によるものだ。
同社ロボット部門の運用専門家ヨンニ・ゲジ氏は、「このデバイスは任務を遂行するたびにより多くのデータを収集し、それを学習して将来の任務に役立てます」と述べている。
反対派からは「軍事ロボットが勝手に判断し、標的を誤って撃つことになりかねない」といった懸念の声が上がっているが、同社は「能力的には可能だが、顧客向けに実用化はしていない」としている。
アブニ氏は、「兵器そのものを自律型にすることも可能ですが、現段階ではユーザーの判断になっています。システムやユーザーがまだそこまで成熟していません」と話す。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ武器部門のボニー・ドチャーティ上級研究員は、「これらの兵器は戦闘員と民間人の区別がつかず、また攻撃によって近くにいる民間人がどのような被害を受けるか適切に判断することができないので、心配です」と指摘する。
さらにドチャーティ氏は「機械は人命の価値を理解することができないので、人間の尊厳を損ない、人権法を犯すことになります」と言う。ハーバード大学法科大学院の講師でもある同氏は2012年、国際法で「完全自動化兵器を禁止すべき」と訴える報告書を提出している。
防衛関連情報を取り扱うジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー誌は、自律型地上車両の開発が航空機や船舶より遅れている理由について、「陸地の移動は、水中や上空を航行するよりはるかに複雑」であると述べている。外洋などと違い、車両は「道路に開いた穴」といった物理的な障害物に対処しなければならず、それを超えるにはどの程度の力が必要なのか、といったことを正確に把握しなければならないのだ。
自動運転車の技術もまた懸念材料だ。たとえば、電気自動車メーカー大手のテスラ社も複数の死亡事故に関係しているという。2018年、アリゾナ州の女性が自動運転で走行中の車両に轢かれるという痛ましい事故も起きている。
By ALON BERNSTEIN and JACK JEFFERY Associated Press
Translated by isshi via Conyac