タイム誌「今年の子供」に15歳の科学者 テクノロジーで社会問題に取り組む
コロラド州の高校に通う15歳の科学者が、タイム誌による初めての「Kid of the Year(キッド・オブ・ザ・イヤー)」に選ばれた。水道水汚染やネットいじめ、オピオイド(鎮痛剤)依存症などの社会問題に取り組むため、人工知能(AI)を活用し、アプリを制作している。
デンバー郊外のローンツリー市に住むギタンジャリ・ラオさんは、STEMスクール・ハイランズ・ランチ校の2年生だ。子供たちや「Time for Kids(タイム・フォー・キッズ)」誌の記者、そしてコメディアンのトレバー・ノア氏からなる最終選考委員会によって、5000名を超える候補者から選出された。
12月4日、ラオさんは自宅からズームを通してAP通信とのインタビューに応じた。「賞を取ることはいままで想像もしなかったことです。未来は私たちの手の中にあります。これからの世代や私たちの世代にきちんと目が向けられていることをとても光栄に思いますし、胸が高鳴ります」と述べている。
タイム誌は「アメリカの非常に若い世代からリーダーが多く輩出されていること」を評価してこの賞を制定した、とケーブルテレビチャンネル「ニコロデオン」とともに声明の中で述べている。同誌は、92年にわたって「Person of the Year(パーソン・オブ・ザ・イヤー)」を発表してきた。これまで選出されたなかでの最年少は、スウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリさんである。タイム誌の表紙を飾った2019年当時、トゥーンベリさんは16歳であった。
ラオさんの傑出している点についてタイム誌は、若い革新者たちに向けた地球規模のコミュニティを築いていることや、目標を追求する仲間への影響力を挙げた。自分が夢中になっているのであれば、小さなことから始めるのでも問題ないと、ラオさんは断言する。
ラオさんの革新的な取り組みは早くから発揮された。12歳の時、水中に含まれる鉛を検知するための小型装置を開発した。
さらにラオさんは、処方薬オピオイド(鎮痛剤)への依存症状を早期に診断する「エピオネ」と呼ばれる装置を作成した。また、人工知能(AI)を活用したアプリ「カインドリー」は、ネットいじめを防止するために考案された。子供たちが入力した単語や文章から、いじめに使用されている言葉を見つけ出し、送信前に違う言葉に置き換えることを提案する。
「そしていま、私は水の問題に立ち返っています。水中にいる寄生虫のような浮遊物質とその検出方法について考察しています」と、リモートによる1日の授業を終えたラオさんは話す。
女優、活動家、そしてタイム誌のコントリビューティングエディターを務めるアンジェリーナ・ジョリー氏は、ズームを通してラオさんにインタビューを行った。ラオさんは、社会的情勢を改善させる方法のひとつとして早くから科学を追求してきたと話す。ミシガン州フリントで起きた水道水汚染がきっかけとなり、汚染物質を検出し、その結果を携帯電話に送信する方法を開発する取り組みにつながった。
「デンバーウォーターの水質研究所で、カーボンナノチューブを用いたセンサー技術について研究をしたいと両親に話したのは10歳の頃でした。母は『一体なに?』という感じでした。その仕事は、すぐにでも私たち世代が担うことになるでしょう。もし誰もしないのであれば、私がするつもりです」とラオさんはインタビューのなかで語っている。
水中に含まれる化学物質など、化学変化の検知に有効な炭素原子の分子は、センサー技術が関連している。
ラオさんは、地域の学校や博物館、また、科学・技術・工学・数学に関連する組織やその他の団体と協力し、数千名の学生を対象にした画期的なワークショップを開いている。
科学をめぐる疑念や難題が後を絶たない世界において、科学を追求することが善意を行動で示すことを可能にし、若者世代が世界をより良くするための最善の方法になると、ラオさんは訴える。そして、新型コロナウイルス感染拡大や地球温暖化をはじめとする多くの問題に取り組むため、科学技術はかつてないほど採用されているという。
「私たちが関わるすべてのことに科学が関係しています。そして、科学こそが一番大事なものであると私は考えています。科学はすばらしいものであり、革新的に取り組むことはすごいことです。そして、誰しもが革新者になれるのです。誰でも科学をすることができるのです」とラオさんは述べている。
Translated by Mana Ishizuki