ドバイで国際ロボコン開催 190ヶ国の若者が参加

AP Photo / Kamran Jebreili

 未来志向を持つ巨大都市としてのイメージ向上を図るドバイで今週、史上最大規模の国際ロボティクス・コンテストが開催された。190ヶ国からやってきた若者たちが、世界的な海洋汚染問題の解決を競い合った。

 イベント主催者によると、開催地にドバイが選ばれたのは、石油の豊富なこのアラブ首長国が世界的なイノベーションの拠点になれるという信認が得られたことの表れだという。未来の科学者やエンジニアが協力し合い、世界で最も喫緊の課題、なかでも環境問題を解決する技術の開発につなげることが目的だ。

 国際競技大会「ファースト・グローバル・チャレンジ」を創設したディーン・カーメン氏は、中東は「大人がお互い良好な関係を築く方法を学ばなかった」地域の代表とした上で、自ら負った傷を修復できるかどうかは若者次第だと語る。

「地球温暖化、極氷冠の融解、鳥インフルエンザ、テロリズムなど、我々は破滅に向けた争いを加速させており、憂慮すべき事態となっている。世界が直面している大きな課題を解決できるかどうかは、優れた技術にかかっている。世界中のすべての子供たちに技術を使う方法を学んでもらいたい。ただし、ツールとして使うのであって、武器としてではない」

 非公式ながら「ロボティクス・オリンピック」と呼ばれるこのイベントでは、若者たちにSTEMと呼ばれる科学、技術、工学、数学を学習してもらうことを目標としている。14~18歳の生徒が4、5人集まって一つのグループとなり、各グループが棒、車輪、電線などの材料を与えられ、漂流ロボットを製作する。課題は、競技場に置かれた様々な大きさのオレンジ色をしたボールを集めること。ボールは、人間が海に廃棄したゴミを表している。ボールをすくい上げるロボットを製作したチームもあれば、ボールをつかんで、容器に投げ飛ばしたチームもある。

 次に各チームが最大4ヶ国から成る「アライアンス」を組み、決勝ラウンド進出をかけて競い合った。全体で1,500人を超える生徒が参加した。

 劇的な争いとなった決勝戦では、ベラルーシがキャプテンを務めシリア難民のいるチームが、イスラエル率いるチームを破って優勝した。だが主催者が強調したのは争いではなく団結だった。

「子供たちはよくわかっている。彼らにとって今回のイベントは競争ではない。コーペティション(協力と競合)だ。これは技術をお祝いする場だ」とカーメン氏は話す。

 以前のイベントでは、安全な飲料水へのアクセスや持続可能エネルギーに関連する課題に取り組んだ。

 ドバイではすでに自動運転の車やタクシーの走行実験を行っていることもあり、ロボティクスと自然に調和している。外国出身の起業家を引き寄せる都市となっており、「インターネットシティ」と呼ばれる地区には、ハイテクのスタートアップが集積している。ドバイは2020年10月に万博を開催することとなっており、世界中から技術の躍進を迎え入れる。

「ドバイが未来の都市になろうとするのなら、世界中から適切な人材を集めなくてはならない」と、世界で初の人工知能(AI)大臣となったアラブ首長国連邦(UAE)のオマール・アル・オラマ氏(29)は話す。「人工知能はデータを基にしている。あらゆる最新技術をもたらすのはデータだ。我々はデータの聖杯を手にしている。200ヶ国の代表がこの国に集まる」

 フェデックスは最近、アメリカ以外では初めてとなる配送用自立走行ロボット「Roxo」の実験をドバイで行うと発表した。このロボットは、歩道のほか未舗装の道路でも走行することができる。

 Roxoはロボティクス・コンテストで世界的なデビューを果たしたが、アフガニスタンやジンバブエなど多様な地域から集まった技術に詳しい10代の若者たちの心をとらえた。彼らはドバイのフェスティバルシティに集まっては、お互いの体験を語り合ったり友情を育んだりしたが、それと同時に製品にまつわる仕事の話もしていた。

「コントロールハブでトラブルが多発したため、競技ではうまくいかなかったが、そんなことは問題ではない。とても楽しかった」と、オランダから来たステファン・シーベスマ氏(17)は語る。「自分にとってロボティクスは本当に重要な存在。勉強したいこと、これからの人生でしたいことの選択につながったから」

 アナウンサーやコメンテーターはスポーツ中継のようにロボットの動きを解説し、ファンは国旗や応援するチームの旗を振った。まるでお祭りのような雰囲気の中、3日間に及ぶ競技が開催された。パビリオンフロアでは、何百万トンもの汚染物が世界の海洋を脅かしている事実を紹介するパネルが展示され、「陸で団結し、海でつながる」や「一緒に汚染の潮向きを変えよう」といったスローガンが掲げられた。

 手に汗握る結果が発表されたとき、イスラエルのメンバーはウガンダのチームメイトと肩を寄せ合っていた。その後、優勝チームと明るい雰囲気で抱擁した。

 シリア難民を代表する「Team Hope」のマネージャーで、優勝チームの一員となったヤメン・ナジャー氏は「信じられない、奇跡だ」と言う。「とても厳しい争いだった。多くの問題に直面したが、希望は捨てなかった」

 まもなく退任する予定であるアメリカのエネルギー長官、リック・ペリー氏もその場にいた。同長官は今年初め、世界政府サミットにサプライズ訪問し、今回のイベントの主催地はドバイであることを初めて発表した。長官は2002年からロボティクス・コンテストに関心を寄せているという。当時はテキサス州知事で、ヒューストンで開かれた地域コンペに出席した際、若手参加者の情熱と能力に「感銘を受けた」という。

 だが、参加者たちの仲間意識の方がより印象に残ったとペリー氏は話す。

「若者たちには驚かされる。我々が国際的な外交関係を築けないでいるところ、この若者たちはそれをやってのけるかもしれない。もしそうであるなら、それこそが今回のイベントで得られた最も重要な意義だ」

By ARON HELLER Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP