NASA、24年有人月着陸の本拠地を「ロケットシティ」に決定

NASA via AP

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は8月16日、アラバマ州ハンツビルにある「ロケットシティ」を開発拠点として次の有人月探査計画を遂行していくと発表した。

 半世紀前、人類で初めて月面着陸に成功したアポロ11号計画を主導したのはヒューストンにあるジョンソン宇宙センターだったが、今回はハンツビルにあるマーシャル宇宙飛行センターが新たに選ばれた。

 新しい月着陸船はまだ建造されておらず、その設計さえも完了していないが、2024年末までにアメリカ人の男性と女性の宇宙飛行士を1名ずつ、月の南極近くに降り立たせる計画だ。この月探査計画の下では、宇宙飛行士たちは月を周回する小さな宇宙ステーションから出発して月の表面を目指し、月面に着陸した後に再びステーションに戻って来ることになる。

 テッド・クルーズ上院議員、ジョン・コーニン上院議員、およびブライアン・バビン下院議員ら3人のテキサス州の共和党議員は今回のNASAの拠点決定に異を唱え、再考を求めていた。ニール・アームストロング船長とバズ・オルドリン月着陸船操縦士の2名が人類で初めて月面に自らの足で降り立ってからちょうど50周年を迎えた日の1ヶ月後、マーシャル宇宙飛行センターのロケット試験発射台の傍らで記念式典が開催された。バビン下院議員は当初、この式典の来賓名簿に名を連ねていたが、この式典には参加しなかった。

「月面探査といえば、『ヒューストン』は最初に口をついて出る言葉の一つだ。かつて人類を月に送り込んだ都市であるヒューストンは、再びアメリカ人を月に送り出す着陸船の開発拠点であるべきだ」と、バビン下院議員は15日の声明で主張している。

 マーシャル宇宙飛行センターは、長年にわたるロケット推進技術のエキスパートである。かつてNASAのサターンV型月飛行用ロケットが1960年台に開発されたのもこのマーシャル宇宙飛行センターだ。そしてこの地は、NASAの新しい大型打ち上げロケットであるスペース・ローンチ・システム(SLS)の開発拠点でもある。月の周回軌道を回る「ゲートウェイ」という名の宇宙ステーションや月着陸船、今回の月探査計画におけるほかの機材の運搬にこのSLSが使用される予定だ。

 NASAのジム・ブライデンスタイン長官は、今回の計画の実施拠点としてマーシャル宇宙飛行センターが選ばれた理由を問われると、月着陸船の送出の成功にはロケット推進技術が不可欠な要素であるためと説明した。

「ロケット推進技術に関しては、マーシャル宇宙飛行センターほど豊富な経験を誇る場所はほかにないと私は主張する。また、宇宙飛行士たちが乗り組むモジュールについては、ジョンソン宇宙センターなしに実施は考えられない」とブライデンスタイン長官は述べている。

 360種類の関連業務のうち3分の1以上、つまり140種の業務はマーシャル宇宙飛行センターで遂行される。87種の業務はジョンソン宇宙センターで実施され、残りの業務はほかの各地でそれぞれ遂行される予定だ。

「我々は皆で一つのNASAだ。同じ目的を達成するために、皆、力を合わせて取り組んでいる」とブライデンスタイン長官は言う。

 今回の計画では、マーシャル宇宙飛行センターの元技術管理者であるリサ・ワトソン=モルガン氏が指揮を執る予定だ。同氏は、アポロ計画のときとは異なり、今回の計画においては産業界も新しい月探査船の製造だけにとどまらず、その設計段階から積極的に関与していく予定だと語る。その目的は、ホワイトハウスが定めた2024年末という期限までに宇宙飛行士たちを月面に立たせることであり、そのための「産業界のスピードとNASAの経験」の最大活用を狙った施策であると同氏は説明している。

 NASAは、ギリシャ神話に登場するアポロンの双子の名にちなみ、この月探査計画を「アルテミス計画」と名づけた。奇しくもアルテミスは月の女神でもある。ブライデンスタイン長官は、女性が月着陸船に乗り組み、初めて月面に降り立つ予定であることを強調している。

By MARCIA DUNN AP Aerospace Writer
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP