ウェブの父「我々の望んだ姿ではない」 現状を憂慮 誕生から30年

Fabrice Coffrini / Pool, Keystone via AP

 バーナーズ=リー氏が設立したワールドワイドウェブ財団は、「ウェブ契約」の中で説明されている原則のもとで、政府、企業、そして一般市民がウェブをより良いものにするためにさらに大きな役割を果たすよう協力を求めている。

 この契約のもとで政府は、誰もがインターネットに接続し、自由に利用することができ、また、人々のプライバシーを尊重するよう求められている。企業は、インターネットへのアクセスを手頃な価格で提供し、プライバシーを尊重し、人々と「公共の利益」を第一に考えた技術開発を推進するよう求められている。そして一般市民は、協力的に「市民の会話」を創造し、なによりも互いに敬意を払うよう求められている。

 バーナーズ=リー氏は、監視と自由の均衡をとることは重要だが、その均衡がどうあるべきかの合意を得ることは容易なことではないと警鐘を鳴らした。

「ハイテク企業に適正な活動を実施させることとそれを規制すること、このバランスをどのように定めれば良いのだろう? 言論の自由とヘイトスピーチの均衡点はどこにあるのだろう?」とバーナーズ=リー氏は問いかけている。

 インターネットと技術の専門家が一堂に会したこの会議では、CERNがさまざまな着想のオープンソース・インキュベーターとして名声を披露する機会も設けられた。バーナーズ=リー氏は、1980年台の後半、CERNに勤務し、異なるコンピュータープラットフォーム間のコミュニケーションとドキュメンテーションのギャップを埋める手助けを行いたいと考えていた。

 現在63歳のバーナーズ=リー氏は、CERNに勤務当時、新進気鋭の若きイギリス人エンジニアとして、ハイパーテキスト・トランスファー・プロトコル(HTTP)やウェブに用いるその他の基礎的な構成要素に関するアイデアを思いついた。このHTTPはウェブのアドレスに冠される文字として親しまれている。

「HTTP」システムを用いると、あるソフトウェアを用いてテキストや小さなサイズの画像を読み出すことが可能になった。このソフトウェアは1990年にバーナーズ=リー氏が発表したもので、ウェブの始まりと考えられている。実際は、コンピューターが各家庭に普及し、そこにインストールされたブラウザを使い、初めて誰もが簡単にインターネットへアクセスすることができるようになった。

Text by AP