UAE初の宇宙飛行士、9月に宇宙へ 推進する大規模宇宙計画
アラブ首長国連邦(UAE)初の宇宙飛行士が今年の9月25日に国際宇宙ステーション(ISS)に向けて飛び立つ予定であることが、先月25日に当局によって発表された。
空軍パイロットのハッザ・アル=マンスーリー氏、またはエンジニアのスルタン・アル=ニヤディ氏のどちらか1名が、宇宙における最初のエミラティ(UAEの国民)となる。これは、自国の世界一高い超高層ビルや国際旅客者数世界最多の空港を誇る、ペルシャ湾岸の一国が進める大規模宇宙計画の一環である。
4,000名を超える応募者の中から選出されたこの2名は、昨年ロシアのロケットが宇宙飛行士を宇宙ステーションに輸送する際に起こした事故について、不安になることはないと話す。
「このトラブルを経たことで、宇宙飛行に向けての準備態勢について自信がいっそう深まりました。不具合が生じた場合に備えて、乗組員の安全を確保するための装置がロケットに搭載されています。高いレベルの妥当性をもってシステムが稼働することを、さらに確信することができました」と、アル=マンスーリ―氏はAP通信に話している。
この事故は昨年10月11日に発生した。アメリカとロシアの宇宙飛行士、ニック・ヘイグ氏とアレクセイ・オフチニン氏を乗せた「ソユーズFG」ロケットは、センサー故障のため打ち上げに失敗した。2名の宇宙飛行士はカザフスタン国内の地上に安全に着陸した。
「このときの宇宙飛行士2名は、間もなく宇宙へ飛び立ちます。ソユーズがいかに安全であるか、またいかなる事故が起きても宇宙飛行士は生還可能だということを証明しています」と、アル=ニヤディ氏は述べる。
UAEの宇宙飛行士2名は、モスクワ郊外にあるスターシティ宇宙センターにて徹底した訓練を行ってきた。圧力室での訓練、遠心機を用いた訓練、放物線飛行訓練、そして厳冬でのサバイバル実践などがその内容だ。放物線状に飛行することで、宇宙飛行士は宇宙空間での無重力状態を訓練することができる。
「私はパイロットですので、9Gまでの重力に耐えることは可能でした。重力に対する訓練で今の私に必要なのは0G、つまり無重力に慣れることです」と、アル=マンスーリー氏は述べる。
アル=ニヤディ氏は、直面した最大の課題は身体的なものではなかったと話す。
「最も困難なことは、おそらくロシア語を習得することでした。宇宙船内で乗組員たちとのコミュニケーションに使用する言葉は、ロシア語のみです。また、ロシアの訓練センターで訓練中に使われていたのもロシア語でした」と、AP通信に語っている。
アメリカの宇宙船スペースシャトルが退役して以降、宇宙飛行士を国際宇宙ステーションへ輸送できる宇宙船は、現在のところロシアのソユーズのみである。
当局は、選出された宇宙飛行士について先月25日に名前を公表するつもりだと話していたが、説明もないまま発表は行われなかった。今年9月に飛び立つ1人目の宇宙飛行士が決定される時期については、はっきりしないままである。
1人目の宇宙飛行士は、9月にロシアの宇宙ミッションとともにソユーズMS-15で飛び立ち、国際宇宙ステーションに8日間滞在する。その後ソユーズMS-12で帰還し、2人目の宇宙飛行士と交代する。
UAEは、大きな野心をもって宇宙計画を打ち立てたところだ。昨年10月には、初の国産衛星「ハリーファサット」が日本から打ち上げられた。2020年には火星探査機の打ち上げが予定されている。
UAEはまた、人口60万人規模の完全な機能を備えた都市を火星に建設し、2117年までに入植したいとの意向を示している。
宇宙飛行中は地球表面から400km以上離れた上空にいることになるが、UAEの宇宙飛行士らは、星に近い地点まで到達した際には故郷の味を堪能する予定だ。ロシアの国有通信社「リアノーボスチ」が報じた匿名関係者からの情報によると、宇宙滞在中のUAEの宇宙飛行士らには、何種類かのアラブ料理が提供されるという。飛行士らは、マクルーベ(具だくさんのピラフ)やサロナ(ラムのシチュー)、定番のフムス(ひよこ豆のペースト)をメニューから選んだという。
By MALAK HARB, Associated Press
Translated by Mana Ishizuki