ディープテックを学んだインドの学士達に人気のキャリアとは?
著:ナリン・アドバニ(Grey Orange Pte Ltd、ナリン・アドバニ アジアパシフィック&ジャパンCEO)
10年前、日常的な活動をしてくれるロボットの存在は、現実離れしていた。しかし今日では、会話ができ、道路をパトロールする警察に入隊したり、顧客の苦情を対処するよう訓練を受けたロボットが存在する。これらの近代技術の驚くべき出来事は、ロボット工学の広範な研究開発の成果だ。人工知能(AI)、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、そして機械学習などのニッチな分野は、世界中、またここインドにおいても(編注:著者の所属するロボットベンチャーGrey Orangeはインドを拠点とする)、単なる空想科学小説から人々の会話へと、大幅に進歩した。
ロボットは、その黎明期に製造分野で居場所を見つけ、反復的、危険、または精度が要求される仕事に配備された。これらの産業用ロボットが自動車会社の組立ラインを変革したことで、より迅速に、より効率的になり、かつ費用対効果も高めた。しかしなから近年のロボット技術は、大量で頻繁な監査または品質検査が必要な時などの、新しい用途に急速に採用されてきた。
グローバルな電子商取引のブームは、技術の進歩と相まって、人工知能、機械学習、IoT(モノのインターネット)、サプライ・チェーンの自動化におけるブロックチェーンやロボットを用いた物流など、新たな技術やアルゴリズムの下地を作った。競争力を維持し、経営の効率と収益性を向上させるために、企業は自社のビジネス・モデルを変革している。インドでも、ダイナミックに変化する消費者のデジタル行動により、革新とロボットを活用したシステムの採用を推進され、電子商取引の大手企業がこの傾向を主導してきた。今日では、製造、医薬品、日用消費財、オムニチャンネル小売、健康管理など垂直方向に急拡大している。
2000年代初期の大規模なIT革命と同様に、インドは、インダストリー4.0を準備している。ロボットは商業市場では既に現実化しており、事業と人材の観点から見て、ロボット市場の潜在能力は計り知れない。政府はデジタル化、人工知能の商業化、インド国内での生産を推進しており、インド企業は、この新しい波を歓迎している。さらに、大手多国籍企業の研究開発拠点の出現は、ディープテックを学んだ人々にとって、胸を躍らせるようなシナリオを生んだ。
ロボット工学と人工知能は、今後数年間で当たり前になり、これらの特殊な専門分野の垣根を超えた技能に合う人材に対する需要は、今後数年に渡って間違いなく多種多様に増大する。これらの新しい最先端分野では、新たに発生したプロダクトデザインのエコシステムを発展させるために、創造的で専門的な精神が求められている。今まさに生まれている未来的な先進技術の知識を有した専門家を対象に、優れた才能を持つ人材のリクルーティングは、スカウトを競い合う企業の間で既に高まっている。
ロボット工学は、ソフトウェア領域での傑出したチャンスに加え、機械、組み込み機器、電気・電子機器などの異なるハードウェア領域で才能のある専門家にも、特別なチャンスをもたらしている。ロボット工学で求められる知識の深さを考慮すると、特に深い領域知識を持つ個人にとって、大きなチャンスになる。例えば、機械工学におけるテクニカルアーキテクトの役割だ。これは、世界中で毎日、何百万回の在庫品取引を処理している何千台ものロボットを展開するスケーラブルなアーキテクチャを構築する機会を与える。また、それと同様に、これらの何千台もの各ロボットを制御するシステムを構築する、頭が切れるバックエンド・ソフトウエアのデベロッパーの役割も大きなチャンスの例だろう。この分野におけるトップ企業の採用情報ページには、ロボット工学分野での絶好のチャンスがより多く提供されている。