「過去最高のコスパ」iPhone XR、米紙も絶賛 XSとの違いは?

Richard Drew / AP Photo

◆必要十分なディスプレイ
 廉価版XRと上位XSとのわずかな差異の一つは、ディスプレイの品質だ。最新のOLED技術ではなく、LCDディスプレイを採用している。NYT紙のコラムニストが数日間実際に使用したところ、上位XSのほうが色の再現性が正確で、暗部の階調表現に優れることが判明した。しかし、XRの画面も従来のLCDよりは優秀だ。アップル独自開発のLiquid RetinaというLCDを採用しており、従来型よりも明るく鮮やかになっている。映画ファンでもない限り、上位XSとの違いは気にならないだろうと同紙は述べている。

 WSJ紙でも、上位XSよりはコントラスト比と解像度が低いとしながらも、普段使っている際にはほぼ気にならないとの所感を述べている。一方、ベゼル(スクリーン周りの外装部分)は上位XSよりも厚く、また、画面を押し込んでサブメニューなどを表示する3D Touchにも対応しないという違いがある。代わりに長押しで起動するHaptic Touchを採用するが、長押しを必要とするため反応が遅いという欠点はあるようだ。

◆シングル・レンズでもボケ効果を実現
 ディスプレイと並ぶ大きな違いが、搭載するカメラの個数だ。上位XSが望遠レンズを含め背面側に2個設けるのに対し、XRは広角相当の1個のみとなっている。しかし、画質そのものは良好だ。ワシントン・ポスト紙が掲載する作例では、夕暮れのサンフランシスコのビーチが自然な階調で表現されている。砂浜と夕焼け空との明暗差が大きく、旧来のモデルでは白飛びあるいは黒つぶれしてしまうシーンをうまく捉えている。

 さらにXRはシングル・レンズながら、背景をボカすポートレート・モードにも対応する。デュアル・カメラ搭載の上位XSは、2つのカメラの視差を活用して前景と背景を区別している。XRでは、代わりに顔認識と機械学習によって背景部分を推測する。このためNYT紙によると、人物以外、例えばペットや料理写真の背景をボカすことはできない。

 この制限は、ちょっとした裏技で回避可能だ。WSJ紙は、フロント・カメラで撮影すると動物にもボケを適用できると紹介している。顔認証用のTrueDepthセンサーを利用して奥行き情報を検出している可能性が考えられる。

 総合評価としては、LCDディスプレイとシングルレンズという差異はあるものの、それが気になる場面は限定的だというのが複数のレビューに共通する見解だ。バッテリ持続時間の公称値もXRの方が長く、多くのユーザにとってXRは優れた選択肢となるだろう。

Text by 青葉やまと