初の民間宇宙船の飛行士9名が決定 スペースXとボーイングが来年試験飛行

AP Photo/David J. Phillip

 8月3日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、来年打ち上げる世界初の民間宇宙船に搭乗する宇宙飛行士たちを発表した。

 スペースXとボーイングは今年の末または来年の初めまでに試験飛行を実施し、来年の春または夏までに、フロリダのケープ・カナベラル宇宙基地からクルーたちを乗せた初の有人宇宙飛行を実施する予定だ。

 9名の宇宙飛行士たちがスペースXの宇宙船「ドラゴン」とボーイングの宇宙船「スターライナー」への乗務に任命された。5名の宇宙飛行士たちは初めて宇宙へ向かうことになり、残る4名は国際宇宙ステーションへの飛行任務が2度目となる。

 ジョンソン宇宙センターでの発表会で、「2011年以来初めて、アメリカ人宇宙飛行士をアメリカ製のロケットに乗せ、アメリカの地から宇宙に向けて打ち上げる日が目前に迫っている」とジム・ブライデンスタインNASA長官は述べた。

 現在、アメリカの宇宙飛行士たちはロシアの宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーションに向かっており、NASAは飛行士1人あたり8,200万米ドルもの費用をロシアに支払っている。

 ボーイングのスターライナーに初めて乗り組む飛行士たちの中には、2011年にスペースシャトルの最後のフライトを指揮した元NASAの宇宙飛行士であり、現在はボーイングの従業員であるクリス・ファーガソン氏が含まれる。他の民間宇宙飛行士たちは今もNASAに所属しており、全員が軍隊に所属した経験を持っている。

 7名の男性飛行士と2名の女性飛行士たちは、壇上を颯爽と歩きながら空中に拳を高々と突き上げ、親指を上げるポーズをとって観衆に挨拶した。

「試験パイロットとして、これほど素晴らしい任務は他にない」と宇宙飛行士のニコール・オーナプー・マン氏は言った。マン飛行士は海軍飛行士の経歴を持ち、今回、スターライナーのクルーとして初めての宇宙飛行に臨むこととなった。

 マン飛行士は発表会で、超満員の観客席から信じられないほど大きなエネルギーを感じたという。

「我々は、こうしてアメリカ宇宙飛行の新たな時代の先導役を務める。まさにこれは初めの一歩だと考えている」とマン飛行士はAP通信に語った。

 NASAは、シャトルが切り離された後にクルーが搭乗する宇宙船の開発費として何十億米ドルもの資金をスペースXとボーイングに払い続けており、さらに、スペースXとノースロップ・グラマンによる宇宙ステーションへの貨物輸送に数十億米ドルの対価を支払っている。この貨物輸送任務は2012年に始まった。クルーに対する宇宙船の安全性を確保する上で技術的な課題や問題に直面したため、クルーを乗せた有人飛行の任務への着手は何度も遅延が生じている。最近では、ボーイングによる試験飛行はエンジン燃料の漏れが見つかり、中止を余儀なくされている。

 スペースXのドラゴンに初めてクルーとして乗り組むことになる宇宙飛行士のダグラス・ハーリー氏は、遅延についてほのめかしながらも次のように述べた。「初飛行は試験パイロットとして誰もが夢見る憧れではあるが、まさか自分がその栄誉ある任務に指名されるとは想像しない。しかし、それが現実のものとなりそうだ」

「そう。その通りだ」とブライデンスタイン氏が同意した。

 ファーガソン飛行士やマン飛行士以外の初の商用乗組員たちは以下の通りだ。エリック・ボー氏、サニータ・ウィリアムズ氏、およびジョシュ・カサダ氏の各飛行士がボーイングのスターライナーに搭乗する。ロバート・ベンケン氏、ダグラス・ハーリー氏、ビクター・グローバー氏、およびマイケル・ホプキンス氏の各飛行士がスペースXのドラゴンに乗り組んで飛行する。

 スペースXの社長兼最高執行責任者であるグウィン・ショットウェル氏は各飛行士への任命の前に写真撮影を行い、「我々はみなさんの期待を決して裏切らない」と述べた。
 
 ボーイングのスターライナーはユナイテッド・ローンチ・アライアンスのロケット「アトラスV」によって空高く打ち上げられる。一方、スペースXのドラゴンは自社のロケット「ファルコン9」によって打ち上げられる予定だ。実際に、誰が最初に宇宙飛行士を宇宙ステーションに送り届けるか、という競争が繰り広げられている。1981年のスペースシャトルの初飛行と2011年の最終飛行の時に掲げられたアメリカの旗が、勝者として名乗りをあげるのを待っている。

 この日、スペースXの白い宇宙服とボーイングの青い宇宙服が、ステージに並んだ宇宙飛行士たちの後方に展示されていた。

 ファーガソン飛行士は観客席に向かって、新しい技術を満載した今回の宇宙船はスペースシャトルよりも安全性を重視しており、事故を防ぐ打ち上げ脱出システムを完備していると話した。飛行士たちは、このシステムを飛行中に携帯するiPhoneと同期しており、以前スペースシャトルのコックピットに備えられていた3,000個ものスイッチと比較しても、最低限の極めて少ない個数のスイッチのみを備えたものとなっている。

 唯一NASAに所属していないメンバーとして、ファーガソン飛行士は、ボーイングの試験パイロットが初めて飛行する際に同社がいつも使うアメリカのニュース共有サイト『レディット』の「アスクミー・エニシング」プログラムの後半で、「スターライナーも例外ではない」と説明した。

 さらにファーガソン飛行士は、自身は当初からボーイングの宇宙船に関与していると述べた。

「善かれ悪しかれ、私が乗務することになった。きっと素晴らしいものになる」と同氏はAP通信に語った。

 スペースXは乗客を搭乗させない試験飛行を11月に予定し、クルーを乗せた有人の試験飛行を4月に予定している。ボーイングは今年の末、または来年の初めまでに試験飛行の実施を目論んでおり、クルーを乗せた有人の試験飛行を来年の中頃に計画している。

 貨物とクルーたちを宇宙ステーションに届けることで、少なくとも2024年までは軌道を周回し続けることになるが、NASAは月と火星に照準を合わせ、オリオン宇宙船とスペースローンチシステム用の大型ロケットの開発を行っている。

 元スペースシャトル指揮官であり、現在はジョン・F・ケネディ宇宙センターを率いるロバート・D・カバナ氏は、「こうしてわが国の有人宇宙飛行にとって心躍る時がやってきた。嘘ではない。我々が未来へ向けて飛翔するにつれて状況は良くなる一方なのだ」と語った。

By MARCIA DUNN, AP Aerospace Writer
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP